こんにちは。
僧侶でライターの小島杏子です。
牡丹の花が華やかに咲き、目に飛び込む緑が鮮やかに輝きはじめるころ、我が家では住職である父親がそわそわとしはじめます。理由は簡単で、ホームセンターにたくさんの苗が並ぶからです。長年家庭菜園にのめり込む父親にとって、これから始まる畑の季節はどうしたって心が浮き立つものなのでしょう。
こういった畑仕事の目安のひとつに「雑節」というものが日本にはあります。中国の黄河流域発祥とされる二十四節気とはちがい、雑節は日本の生活のなかから生まれてきました。長いあいだ積み重ねられた生活の知恵と経験に基づいた、大切な季節の目印です。
今日はそんな雑節のなかのひとつ「八十八夜」のお話。
「八十八夜」と言われると、「夏も近づく……」と口から歌がこぼれてくる方も多いかと思います。
夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘みじゃないか
茜襷(あかねだすき)に菅(すげ)の笠
小学校の教科書にも掲載され、全国で歌い継がれてきたこの唱歌『茶摘』は、5月の茶畑の美しい風景を歌ったものです。
立春から数えて88日目が、八十八夜にあたります。
このころ、来たる初夏を前に最後の冷え込みが夜、山間部を包むことがあるそうです。雨のあとのよく晴れた日、夜が更けるころになって急にぐんと冷え込んで霜が降りる。この、季節外れの遅霜(晩霜)は、桑やお茶、果樹などに大変な打撃を与えます。
八十八夜を過ぎるころになれば、霜の心配もなくなり、安心して種をまいたり苗を定植することができるのです。
このことを「八十八夜の別れ霜」と表現することがあります。ほかに「忘れ霜」「霜の果て」なんて美しい言い回しもあるようです。
調べてみると「八十八夜の〇〇」という言い回しは非常に種類が多く、それらのほとんどは「八十八夜の別れ霜」と同じように、畑仕事のさまざまなタイミングや注意を伝えるものでした。特に近代的な農法が発展するより前は、季節の移ろいを見つめ、そこにあらわれる大切な目印を見逃さないことが、人々にとってとても切実な仕事だったのでしょう。
八十八夜が過ぎれば、すぐに立夏。春の終わり、最後の寒気をしのいだら、やがて空は夏めいて田植えの季節が訪れます。
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