こんにちは。気象予報士の今井明子です。
今回は秋風についてお話ししたいと思います。この時季に「秋風」の話をしても「は? まだまだ残暑が厳しいんですけど…」という声があがってきそうですね。実際に、最近では夏が暑くなるだけでなく、残暑も長引いて、「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざがあまり当てはまらなくなってきているような気がします。
暦の上では毎年8月7日頃に立秋を迎えたら、そのあとの8月8日~12日頃は七十二侯の「涼風至(すずかぜいたる)」とよばれる時期です。つまり、立秋を過ぎたらちょうど風も夏の暑い風から涼しい風に変わり始めるということです。
確かに、昼間はさておき、朝や夕方のふとした瞬間に、顔をなでる風の涼しさにハッとすることがこれから増えていきます。朝や夕方にはコオロギやスズムシの鳴き声も聞こえ始め、もう夏は終わってしまうんだなと実感します。そこに一抹の寂しさを感じるのは私だけでしょうか。
秋風が涼しいのにはわけがあります。それは、湿気が少ないからです。
夏に日本列島を覆っていたのは高温多湿な太平洋高気圧です。しかし、季節が移ろうにつれ、太平洋高気圧の勢力は弱まり、大陸から移動性高気圧がやってきます。移動性高気圧は、温暖な高気圧ではあるものの、大陸生まれということもあって、乾燥した空気で構成されています。湿気が少なければ体感温度は下がります。ですから、秋風は涼しいのです。
これから暑さが少しずつ収まれば、もっと気軽にお出かけできるようになります。さわやかな秋風を思いっきり吸い込んで、リフレッシュしたいと思います。

今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
