「クコの実」という、やさしくて強い存在
漢方や薬膳の世界に少しでも触れたことのある方なら、一度は目にしたことがあるかもしれないクコの実。
赤くて、小さくて、ちょっとシワのある、あの果実。
見た目は控えめ。でも、この実には、とんでもなく深い力が宿っているのです。
中医学では、クコの実は「枸杞子(くこし)」という名前で、生薬として使われています。
五臓の中では「肝(かん)」と「腎(じん)」を養う力があるとされ、
特に「肝」を補い、「腎精」を満たす働きがあるといわれています。
「肝を養う」ってどういうこと?
肝は、単なる“肝臓”ではありません。中医学での「肝」は、血を貯めたり、全身の“気”の流れをスムーズにしたり、目や筋、爪、情緒にまで影響する「巡りと栄養の要」です。
だから肝が弱ると、
・目が疲れる
・爪がもろくなる
・イライラしやすくなる
・月経不順になる
・筋肉がつりやすくなる
なんてことも起きてきます。
そこで頼りになるのが、クコの実です。
クコの実には「補肝明目(ほかんめいもく)」といって、肝を元気にし、目をすっきりさせる力があるとされます。PCやスマホで目を酷使する現代人にとって、まさにぴったりな果実。
「腎を養う」ってどういうこと?
中医学でいう「腎」は、成長・発育・老化・生殖など、いわゆる“人としての根っこ”を支える臓。クコの実は、その腎のエネルギー、つまり「腎精(じんせい)」を補ってくれる。だから昔から、クコはアンチエイジングの妙薬としても愛されてきました。
中国にはこんなことわざがあります
「家を去ること三千里、枸杞を食うことなかれ」
訳すと、
「旅に出る夫には、枸杞の実を食べさせてはいけない」──。
つまりそれほど、精力をつける効果があるという意味なんです。
クコの実は、「補腎益精(ほじんえきせい)」──腎を補い、精(生殖のエネルギー)を高める力があるとされ、男女問わず、性生活や生殖機能のサポートとしても用いられてきました。特に男性にとっては、「夜の強壮薬」としても知られていたわけです。
昔の中国の女性たちは、旅に出る旦那さんにクコの実を食べさせるのをちょっとためらった、なんて話もあります(本当かどうかはさておき)。
じゃあ、現代の私たちはどう食べたらいいの?
クコの実は、漢方薬として煎じても使われますが、日常では「薬膳」として取り入れるのがとてもおすすめです。
•お粥に入れる
•白きくらげと一緒に甘く煮る
•スープや炒め物に彩りとして加える
•なつめと一緒に煮出してお茶にする
そのまま食べるときは、1回に10粒程度(約6g)、1日2回ぐらいが目安です。食べすぎると、体に熱がこもるタイプの人(=イライラしやすい人)にはちょっと負担になることも。
最後に
クコの実は、地味で、主張が少ない。でも、肝を養い、腎を支え、目を癒し、元気をじんわり戻してくれる。
「ちょっと疲れたな」と思ったら、
「クコ、入れておこうかな」と思い出してみてください。
からだは、きっとちゃんと応えてくれます。

櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
