今日の読み物

お買い物

読み物

特集

カート内の商品数:
0
お支払金額合計:
0円(税込)

ざる蕎麦

旬のもの 2025.08.05

この記事を
シェアする
  • X
  • facebook
  • B!
  • LINE

こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「ざる蕎麦」についてのお話です。

北海道に移住した友人を初めて訪ねた時のこと。夏のラベンダー畑を見るべく、私たちは富良野へとやってきた。
お昼になり、友人に「蕎麦を食べよう」と提案され、私は少し驚いた。北海道といえば海鮮やジンギスカン、スープカレーなど、漠然と食べたいものを考えていたからだ。蕎麦は全くの想定外。聞くと、彼女も北海道に来てから、こちらの蕎麦の美味しさに感激したという。食通の友人が言うのなら、きっとそうなのだろう。私たちは店へと向かった。

車の窓から外を眺めると、広大な畑が広がっている。なだらかな起伏の畑には、色合いの異なる作物が植えられていて、パッチワークの景色が美しい。窓を開け放つと、からっとした気持ち良い風が流れ込んできた。

「北海道で食べた蕎麦は、香りとコシの強さが最高だったの」と友人。蕎麦は暑すぎず、昼夜の寒暖差が大きい方が美味しくなるという。こうして実際に北海道の大地を目にすると、太陽の恵みをたっぷり浴び、湿気の少ないこの気持ちの良い環境で育つ蕎麦が、美味しくないはずがないと納得した。
しかも今の時期は、ちょうど北海道は蕎麦の花も咲いているという。目の前に広がる景色を眺めながら、「あの白い畑は蕎麦の花かな?」なんて話していると、早く蕎麦が食べたくなってきた。

着いたお店はこぢんまりとした古い木造の家だった。飴色になった木の壁に、厳しい自然を耐えて抜いてきた歴史を感じる。暖簾をくぐり中に入ると、まるで時間が昭和で止まったかのような山小屋風の店内に、出汁の香りが広がっていた。女将さんが温かく出迎えてくれ、お腹ペコペコの私たちは、早速ざる蕎麦を注文した。
奥で店主のおじいさんが黙々と作業している。壁には一面、訪れた人のサインやメッセージがずらりと並び、長く愛されてきた様子が伝わってきた。丸太をくり抜いて作られた温もりのある椅子に腰掛けていると、長距離移動での疲れが癒やされていくようだった。

出てきたのは、太めの田舎蕎麦。黒い麺にザクっと乗せられた海苔が、まるで「さあ!遠慮なく豪快に召し上がれ!」と語りかけているかのよう。
出汁に潜らせてズズッとかき込むと、しっかりと感じられるそばの香りが鼻を通る。もちっとした麺が食べ応えがありながらも、さっぱり体に染み込んでいく。野菜天は、北海道の寒さで旨みを蓄えた玉ねぎが最高に甘く、出汁とも相性良し…!その美味しさに箸が止まらず、ペロリとたいらげてしまった。満腹で椅子にもたれる私たちに、女将さんが蕎麦湯を持ってきてくれた。とろりとした蕎麦湯にほっこり、美味しい時間を締め括る一杯にほっと一息。
「北海道の蕎麦は美味しいね」「ここに来られてよかったね」と二人で心から満足したのだった。

夏に蕎麦はピッタリ。冷たく締めた麺はツルリと喉を通り、体をリフレッシュさせてくれる。消化もよく、食欲が落ちやすい季節でも、無理なく食べられるだろう。清涼感溢れるざる蕎麦を食べて、今年の残暑を乗り切りたいところだ。

この記事を
シェアする
  • X
  • facebook
  • B!
  • LINE

庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

記事一覧