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アキグミ

旬のもの 2025.10.29

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秋が深まるにつれ、里山ではヤマグリ(山栗)やアケビ(木通)などが膨らみ、アキグミ(秋茱萸)もまた、真っ赤な実をつけて彩りを添えてくれます。アキグミは、和名のとおり、秋に赤い果実が実るグミの仲間。色鮮やかに熟れた実を口いっぱいに頬張った記憶を持つ人も多いことでしょう。

名前は果実が熟す時期

アキグミは、北海道南西部から沖縄まで、日本全国に自生するグミ科グミ属の落葉低木。国外ではヒマラヤ山脈から中国、朝鮮半島に分布します。樹高は3~4mほどで、日当たりのよい原野や川原などの水辺に見られます。
葉は、先端が尖った長さ5~8㎝の楕円形。若い葉の裏側は白銀の毛で覆われ、きらきらとしていることが特徴です。そして枝のところどころにはトゲがあります。
日本のグミの仲間は十数種ほどで、多くの場合、果実が熟す時期で名づけられています。秋のアキグミのほか、夏に熟する同じ落葉樹のナツグミ(夏茱萸)、そして稲の苗代をつくる4~5月に実る常緑樹のナワシログミ(苗代茱萸)などがあります。

すずなりの 茱萸をかざして 通りけり

いずれのグミも果実は渋みと酸味、かすかな甘味があって食べられます。ただ、市場に流通するようなものではなく、かつてはグミを庭に植えている家では、百個あまりも実った大枝を惜しげもなく折り取り、近所の子どもたちに持たせてくれました。
掲句は、若林いち子氏の作品。鈴なりのグミをもらって帰る子どもたちの晴れがましい表情が浮かびあがってくるようです。

お菓子のグミとは無関係

和名の「グミ」の由来は、「グイミ」という説があります。「グイ」は方言でトゲのことで、「ミ」は実のこと。これが縮まってグミとなったそうです。
一方、果汁などをゼラチンで固めた「グミ」は、ドイツ発祥のお菓子です。ドイツ語でゴムを意味するGummiに由来します。

アキグミの花期は4月下旬~5月中旬。花弁に見えるものは実は萼(がく)です。萼は細長い筒状となり、先端は4つに分かれています。筒の長さは6~7㎜で、全体にウロコ状の毛が生えています。初めは白く、やがて淡い黄色となり、とてもよい香りを放ちます。そして10~11月に、球形の直径8mmほどの朱色から赤色の美しい実をつけます。葉のほか、枝や 果実も小さなウロコ状の毛に覆われて銀色に光ることから、英名はJapanese silverberry(ジャパニーズ・シルバーベリー)です。

花言葉は「野性美」「心の純潔」「用心深い」

かつては子どもたちの美味しいおやつだったアキグミですが、今では採集することが減り、たとえ機会があっても、生食では少し口になじまぬかもしれません。そのような時は砂糖を加え、果実酒やシロップ、ジャムにすると口当たりもよくなります。
さて、前衛俳句・社会性俳句の旗手として活躍し、戦後日本を代表する俳人、金子 兜太(かねこ とうた/1919~2018年)には、次のような句があります。

あきぐみに 陽(ひ)の匂う風 吹き来たる

秋が深まり、アキグミの実の熟れる頃になると、風も冷たさを増してきます。兜太の故郷である山国、埼玉の秩父ではなおのこと。そんな中で、春のように優しく温かい風が吹く「小春日和」の時があります。本格的な冬の訪れの前、太陽の匂いがする山野の風に吹かれて、アキグミは宝玉のルビーよりも透き通り、いっそう赤く輝くのです。

花言葉の「野生美」「心の純潔」は、そうした自然の恵みへの賛美から生まれたのでしょう。「用心深い」は、グミに鋭いトゲがあること、甘そうな赤い実が、予想外に酸っぱくて渋みがあることが由来とされています。
アキグミは、咳止めの生薬「牛奶子(ぎゅうだいし)」ともなる、栄養豊富なベリーです。この秋もまた、山の恵みであるアキグミが豊富に実りますように。

アキグミ(秋茱萸)

学名: Elaeagnus umbellata
英名:Japanese silverberry

グミ科グミ属の落葉低木で、ヒマラヤ山脈から中国、朝鮮半島、日本に分布。樹高3~4mほど。花期は4月下旬~5月中旬で、花弁に見えるものは萼(がく)。萼は細長い筒状となり、先端は4つに分かれる。筒の長さは6~7㎜。10~11月に、球形の直径8mmほどの朱色から赤色の実をつける。果実はかすかな甘味があって食べられる。葉、 枝、 実は小さなウロコ状の毛に覆われて白く光る。

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森乃おと

俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)

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