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きんぴらごぼう

旬のもの 2025.11.30

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「きんぴらごぼう」についてのお話です。

秋が深まり、冬の寒さが見えだすころ、私は馴染みの八百屋で「あのごぼうはそろそろですか?」とつい尋ねてしまう。
私が心待ちにしているのは、滋賀の「吉川ごぼう」だ。はじめて食べた時は、その力強い美味しさに驚いた。ごぼうといえば、土を洗ったり皮をこそいだりして、台所が汚れてしまう。細くて硬くて切りにくく、ささがきや細切りも大変。私にとって、少し腰が重くなる食材だった。
それがこのごぼうなら、その手間を惜しんででも、食べたいと思える食材となったのだ。

ごぼうの販売日、私はウキウキで店に向かい真っ先にごぼうを探した。秋冬が旬の根菜たちと並んで、吉川ごぼうが、あった。
3センチ以上はありそうな極太で存在感があるものも。初めて見た時は「切るのが大変そうだなぁ…」とたじろいだが、今となってはこれが良い。
「今日は、食感たっぷりのきんぴらごぼうを作ろうっと」。太めのごぼうを購入し、家へと戻った。

私は台所に立ち、「良し!」と腕まくりをして吉川ごぼうを1本取り出した。シンクからはみ出すほどの長さのごぼうには、土がしっとり付いている。吉川ごぼうは、水はけの良い砂地の畑を利用してごぼうが栽培されているという。「きっとのびのび育ったんだろうなぁ」と考えながら、丁寧に土を洗い流し、包丁の背を使って皮をこそいでいく。
適当な長さに切り揃えたら、斜め切りにして細切りに。柔らかく、包丁がすうっと入るので、気持ちが良い。水を張ったボウルに入れると、透明感のあるごぼうが気持ちよさそうに浮かんでいた。

水を切ったら、フライパンで炒めていく。あたたまった油と瑞々しいごぼうが出合う時の「ジャッッ!」という豪快な音は、これから出来上がる料理の美味しさを確約してくれているかのよう。油を絡ませるように炒めていると、徐々にごぼうがしんなりして、香ばしい香りがしてきた。鍋肌に沿ってみりんを入れて混ぜ合わせ、醤油も絡めて汁気を飛ばしたら完成だ。
最後に山椒の粉をサッとふって混ぜ合わせるのが、私の元気の出るひと手間である。

平皿に盛って、食卓へ。地味な色だが、飴色に輝く照り具合と、漂う甘辛い香りに食欲がそそられる。白米と一緒に早速いただく。
ポリっという軽快な音と共に、ごぼうの繊維の抵抗が歯に心地よい。噛む度、吉川ごぼうらしいすっきりとした味も感じられる。しっかりとしたシャキシャキ感と、その奥に大地のような力強い歯応えを感じる。
そして調味料の甘さ、辛さ、醤油の塩気、ごぼう本来の風味が口の中で完璧なバランスを保っている。食感も味わいも、これだけで満たされる。なんと食べ応えのある料理だろう。

「きんぴらごぼう」という名前は、かの昔話の金太郎の息子の「金平(きんぴら)」という人物に由来している。金太郎譲りの怪力と勇気を持つ豪傑として、その強さや勇ましさが人々に知られていたという。
元気が出る食材、精がつく食材として知られていたごぼうは、その強靭な食感もあって、「食べると金平のように強くなれる」という願いも込められていたそう。油で炒めて濃い味付けで仕上げる、まさしく力強い料理といえるだろう。

たくましく育ったごぼうの太さに感化され、気合いを入れて腕をふるって料理したくなる。そして、もりもりと豪快に食べたくなるごぼう。きんぴらごぼうは私にとって、冬の寒さも跳ね返す、エネルギッシュな一品なのだ。 
寒さが一層強くなって、つい様々なことが億劫になりがちな冬。きんぴらごぼうを食べて、元気に過ごしたいところだ。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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