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テッポウユリ

旬のもの 2026.06.23

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こんにちは。俳人の森乃おとです。

夏に咲く花の中でも、テッポウユリ(鉄砲百合)の花の白さは、ひときわ季節の訪れを感じさせてくれます。ユリは人類史上、もっとも古くから栽培された花のひとつ。その歴史の中で、日本列島から欧米に渡ったテッポウユリは、東と西をつなぐ優美な架け橋となりました。

武器の名を持つ純白のユリ

テッポウユリは、ユリ科ユリ属の多年生の球根植物。日本在来種で、九州南部から沖縄にかけて分布し、海岸の岸壁などに自生します。

草丈は50〜100㎝で、茎の周りに互生する太めの葉は長さ約18㎝、幅約3㎝。4~6月頃、すらりと伸びた茎の頂上に、細長いトランペット型の純白の花を横向きに咲かせます。花長は10~16cm、花径5㎝ほどで、芳香を放ちます。

花弁は6枚あるように見えますが、基部がつながっていて筒状になっています。また、外側の3枚は萼片(がくへん)で、本当の花弁は内側の3枚。それぞれ外花被(がいかひ)、内花被(ないかひ)と呼ばれます。テッポウユリの最大の特徴は、外花被の基部が緑色を帯びますが、花全体が純白に見えること。よく似た近縁種に、やはり白色の花を咲かせる台湾原産のタカサゴユリ(高砂百合)がありますが、外花被に赤紫色の筋が入っていることで見分けます。

学名はLilium longiflorum(リリウム・ロンギフローラム)。種小名のlongiflorumは「長い花」の意です。和名の由来は、花の形が砲口の広がったラッパ銃に例えられたことから。あるいは室町時代にポルトガルから伝来した火縄銃=種子島銃に、つぼみの形が似ているからともいわれます。

「リュウキュウユリ(琉球百合)」「サツマユリ(薩摩百合)」、あるいは「ツツナガユリ(筒長百合)」などの別名もあります。

聖母マリアを象徴する「イースターリリー」

さて、ユリといえば西洋のイメージが強い植物ですが、実は日本こそ「ユリの王国」。ユリの仲間は地球上に130種ほどが分布し、その大半が東アジア産。日本には15種が自生し、そのうち7種が固有種です。テッポウユリはその中のひとつで、他には「ユリの王様」と称されるヤマユリや、古事記にも登場する可憐なササユリ、ブチ模様が美しいカノコユリ、花を上向きに咲かせるオレンジ色のスカシユリなどがあります。

現在、世界にはさまざまなユリの園芸品種がありますが、ゴージャスなユリの女王「カサブランカ」をはじめ、これらの多くが日本原産のユリが輸出されて作出されたものです。
テッポウユリを欧米に紹介したのは、来日したスウェーデンの植物学者カール・ツンベルク(1743~1828年)や、ドイツ人医師フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796~1866年)。

それまで、ヨーロッパでは聖母マリアの純潔を象徴する白いユリの代表格は、地中海沿岸を原産地とするマドンナリリーでした。しかし、テッポウユリが紹介されるやいなや大人気となり、マドンナリリーに代わってキリスト教における「聖花」となったのです。

欧米ではマドンナリリーと区別して、テッポウユリは「イースターリリー(Easter lily)」と呼ばれ、現在、主に復活祭(イースター)の儀式を飾る花として使用されます。ちなみにマドンナリリーの和名は、「ニワシロユリ(庭白百合)」です。

花言葉は「純潔」「威厳」「甘美」

花言葉の「純潔」は、純白の花が聖母マリアの清楚な美しさを象徴することが由来。「威厳」は気品に満ちた凜とした佇まいから生まれました。
ユリの仲間では、ヤマユリやカサブランカなどは強く濃厚な香りを放ちます。一方テッポウユリは、優しくて甘い上品な香りです。そのため「甘美」という花言葉を与えられたのでしょう。

さて7月が近づきテッポウユリの花と出合うと、口の端にのぼるのが次の詩歌です。

七月は鉄砲百合
烏揚羽(からすあげは)がゆらりと来て
遠い昔を思はせる
(後略)

――三好達治(みよし・たつじ/1900~1964年) 「七月は鉄砲百合」より 『百たびののち』(1962年)所収

三好達治といえば、昭和期を代表する現代詩人。「雪」「乳母車」などの詩は教科書にも掲載され、みなさんもよくご存じのことでしょう。
夏はユリの咲く爽やかで眩しい季節であると同時に、死者を悼むお盆の季節でもあります。そして蝶は、洋の東西を問わず、霊魂の再生のシンボル。この詩の中で、テッポウユリの清浄な白と、カラスアゲハの艶やかな黒は美しいコントラストを描き、懐かしい人たちへの慕情と祈りが、静かに浮かびあがってくるようです。

テッポウユリ(鉄砲百合)

学名: Lilium longiflorum
英名:Easter lilytu

ユリ科ユリ属の多年生の球根植物。日本固有種で、九州南部から沖縄にかけて分布。草丈50〜100㎝。4~6月頃、茎の頂上にトランペット型の純白の花を横向きに咲かせます。花長は10~16cm、花径5㎝ほどで、芳香を放つ。英名はイースターリリー(Easter lily)」。主に復活祭(イースター)の儀式を飾る花として使用される。

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森乃おと

俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)

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