梅は梅のまま咲くように、今いる場所で、自分の花を咲かせるようとするのがよいのだという例えです。
春の前半は小さな草花たちの季節でしたが、後半はいよいよ木に咲く花、木花(このはな)の季節です。
桃に続いて咲き出すのは、季(すもも)の花や、杏(あんず)の花。
そしてもうすぐ開花する桜に続いて、梨や林檎の花などの花が次々と咲いて、日本の春はいよいよ花盛りを迎えます。
桜梅桃李(おうばりとうり)という言葉があります。古く中国から伝わる四字熟語で、仏教とも関わりが深い言葉です。
桜、梅、桃、季(すもも)がそれぞれの場所で異なる花を咲かせるように、人間も自分に与えられた肉体や境遇をしっかりと受け入れ、そのままの性質を持ちながら、悟りの境地をめざすのがよいという意味です。
樹木は動くことができませんし、梅が桜になることもできません。どの花を見ても、ただそのままに咲いている素直さ、美しさがある。
そんなふうにそれぞれの人に良さがあり、梅は梅のまま咲くように、今いる場所で、自分の花を咲かせるようとするのがよいのだという例えです。桜梅桃李はこの四種に限らず、さまざまな花の木の形容でもあります。
文責・高月美樹
〈バックナンバー〉