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こよみの足音【桃李成蹊】和暦研究家・高月美樹さん

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人徳のある人は何も言わなくても自然に慕われ、人々が集まってくるという意味です。

「桃李(とうり)もの言わざれども下自ら蹊(こみち)を成す」

この言葉の起源はかなり古く、前漢時代、司馬遷の『史記』に描かれた李広将軍の人柄を伝えたもので、「桃李成蹊(とうりせいけい)」という熟語になって知られています。

桃や李(すもも)は何もいわずにただ静かに咲いているが、その美しい花や香りに誘われて、その木の下には自然に人が通い、小径ができる。人徳のある人は何も言わなくても自然に慕われ、人々が集まってくるという意味です。

実際に李広将軍に会って話したという司馬遷によると、李広将軍は本当に口数が少なく、話も下手だったそうですが、とにかく清廉な人柄で、休憩のときは自分より先に兵士たちに水を飲ませ、全員が食事を始めるまで食事をせず、自由なスタイルで休ませたり、自分の恩賞を部下に分け与えるなど、多くの逸話が残っています。

その結果、部下になりたがる兵士が多く、民衆にも広く慕われて圧倒的な人気があったそうで、亡くなった時は会ったこともない人々までが、その死を悼んだとされています。

口下手でも人柄というものははっきりと伝わるもの。調子のいい人よりも、言葉に嘘のない朴訥な人の方が、結果的には信頼されたりします。静かに咲いている花たちのように、誰に見せるともなく、心の花を咲かせていきましょう。

俳優の松坂桃李さんのお名前は「桃李成蹊」の「誰からも慕われるように」というお父様の願いと、「桜梅桃李」の「自分らしく生きられるように」というお母様の願いからつけられたそうです。

文責・高月美樹


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高月美樹

和暦研究家・LUNAWORKS代表 
東京・荻窪在住。和暦手帳『和暦日々是好日』の制作・発行人。好きな季節は清明と白露。『にっぽんの七十二候』『癒しの七十ニャ候』『まいにち暦生活』『にっぽんのいろ図鑑』婦人画報『和ダイアリー』監修。趣味は群馬県川場村での田んぼ生活、植物と虫の生態系、ミツバチ研究など。

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