花たちはそれぞれに笑い、うきうきした気持ちを抑えきれないかのようにさえずる鳥の声もほころびです。
いよいよ百花繚乱の季節。
ソメイヨシノに続いて、華やかな八重桜が満開です。さまざまな花樹が色とりどりに花を咲かせ、鳥たちが高らかにさえずっています。
山花咲野鳥語(さんかわらいやちょうかたる)
「咲く」と書いて、「わらう」と読みます。「笑い」とは固く結ばれていたものがほころぶこと、隠れていたものが外側に出ること。花たちはそれぞれに笑い、うきうきした気持ちを抑えきれないかのようにさえずる鳥の声もほころびです。
花は誰に見せるためでもなく、ただ無心に花を咲かせ、鳥たちはただ精一杯さえずっています。人もまたなんの作為もなく、共に在ることの中に、この世界の本当の美しさがある。この世の真理を自然の姿が教えてくれている、晩春にふさわしい禅語です。
鳥聲は花中の琴琵なり 素堂
文責・高月美樹
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