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小春日和こはるびより

季語 2021.11.25

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こんにちは。気象予報士の今井明子です。
日ごとに秋が深まり、平地でも紅葉が楽しめる場所が増えました。
木枯らしが身に染みる季節ですが、たまにポカポカと暖かい日もあります。
このような晩秋の暖かい日のことを「小春日和」といいます。

なんだか意外ですよね。秋なのに「小春」?
そうなんです。「春」と入っているせいで、小春日和は春の言葉だと勘違いされがちです。
「いやいや、小春日和は春とは違うよ」と知っている人も、1~2月の早春の時期に「今日は暖かいから小春日和だな」なんて言いたくなってしまうのではないでしょうか。実をいうと私もそうです。

でも違うのです。小春という言葉は、もともと旧暦10月の別称として使われていました。ですから、小春日和は、ちょうどこの時期、11月から12月上旬にかけての暖かい日を指します。この時期は、シベリア高気圧の勢力が強まり、北西の季節風、すなわち木枯らしが吹いて日ごとに冷え込んでいくのですが、たまに冬型がゆるんで暖かくなる日があります。これが小春日和です。

しかし、12月初旬を過ぎたあとの真冬にも暖かい日はたまに訪れますよね。このような日のことは小春日和ではなく「冬日和」といいます。小春日和ほど耳にしないので、知らない人も多いはずです。

ちなみに、文化庁が2014年に行った「国語に関する世論調査」で「小春日和」についての意味を尋ねたところ、「初冬の頃」と回答したのが51.7%、「春先の頃」と回答したのが41.7%という結果になり、10代と20代では「春先の頃」と回答する割合が「初冬の頃」と回答する割合を上回ることがわかりました。

言葉というものは、本来の意味やつづりと違っていても、多くの人がそのように使っていくうちに市民権を得て、新しい使い方が一般的になるものです。五月晴れも、もともとは梅雨の中休みを意味していましたが、今では5月のすがすがしい陽気をイメージして使われるほうが一般的です。そう考えると「小春日和」という言葉も、いつしか本来の時期ではなく、春先の頃を意味して使われるようになるのかもしれませんね。

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今井明子

サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。

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