こんにちは、こんばんは。
ライターの栗田真希です。
みなさんは、「木の実時雨(このみしぐれ)」を経験したこと、ありますか?
「木の実時雨」というのは「秋に、木の実が木から落ちることを時雨にたとえたさま」なんだそうです。

わたしにははっきりと思い出せるような経験がなく、「ねえねえ、知ってる?」と知り合いのおじいちゃんおばあちゃんたちに尋ねてみました。
「ああ、家の中にいるとき、晴れているのにポツポツ物音がして、なにかと思ったら、どんぐりが落ちる音だった。あれ、『木の実時雨』っていうのね」
「納屋とか工場とか、屋根がそんな立派じゃないところだと、けっこうはっきり音がするねえ」
山々に囲まれた田舎町に住んでいるからか、わたしが説明すると、そういえば……と「木の実時雨」のことを話してくれました。木の実が落ちる瞬間を見ているというより、音を楽しんでいるようでした。
「急に音がするけん、なんか動物が屋根裏に入ったかと思ったこともあったねえ」と笑いながら教えてくれた方も。

おじいちゃんおばあちゃんたちとお茶を飲みながら、「その『木の実時雨』も、そろそろだわねえ。こないだまで夏やったのに、もう寒うなってきて」と季節の移り変わりも話題になりました。そういえばちょっと前まで、多くのセミが一斉に鳴きたてる「蝉時雨」を聴いていたのに、もう秋です。
今年の秋はわたしも、「木の実時雨」を味わいたい!
そう宣言すると、
「山に入ったら、アタマの上にぎょうさん木の実が降ってくるかもしれんぞ」
と冗談まじりに笑われました。
うーん、アタマの上に硬い木の実が降ってくるのはちょっとなあ。と考えていたら、ひらめきました。

山へドライブに行って、木の実が落ちてきそうな樹木の下に車を停めるのです。エンジンを止め、静かな車中で読書を楽しむ。あたたかい飲みものとブランケットも持って、サンドイッチやおにぎりなんかも持参したい。そうやってゆったり過ごして、車のルーフやフロントガラスに木の実が落ちてくるのを待つのです。想像するだけで、ときめきます。
今年の秋は、そんなふうに秋を感じながら過ごす時間を持とうと思います。


栗田真希
ライター
横浜出身。現在は東京、丸ノ内線の終着駅である方南町でのほほんと暮らす。桜をはじめとした花々や山菜が芽吹く春が好き。カメラを持ってお出かけするのが趣味。OL、コピーライターを経て現在はおもにライターとして活動中。2015年準朝日広告賞受賞、フォトマスター検定準一級の資格を持つ。
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