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初蝉はつぜみ

季語 2024.07.14

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ミーンミンミンミンミン...
という声が聞こえはじめたらいよいよ夏本番。あの蝉たちの大合唱が今年もやってくる季節が近づいてきましたね。

その年に初めて鳴く蝉のことを「初蝉(はつぜみ)」といい、夏の季語です。
蝉は、毎年梅雨が明けるか明けないかの曖昧な時期に、木々あたりから「ジジジ...」なんて声が聞こえることがあります。あれ、蝉の声だったかなぁ...と思っていたら数日後に大合唱がはじまってやっぱり蝉だったことに気づく。その繰り返しで、毎年季節のめぐりを教えてくれる生きものだなと思います。

そんな蝉を私たちが普段目にするのは成虫になってからですが、蝉の一生は短いといわれています。幼虫として何年間も土のなかで過ごし、夏になると地上へ出て成虫になり、1週間から1ヶ月ほどひと夏を過ごして命が尽きます。

また、蝉が鳴くのはオスのみで、メスに自分のいる場所を知らせる求愛行動だといわれています。メスを見つけたら交尾をし、木の幹などに卵を産み、子孫を残します。
この生き様を知ると、蝉たちの賑やかな声がより尊く感じるような気がしますね。

私は毎年蝉の声を聞くと、この俳句を思い出します。

” 閑さや岩にしみ入る蟬の声 松尾芭蕉 “

松尾芭蕉の代表作『奥の細道』に収録されている俳句で、芭蕉が梅雨明けの時季に出羽国(山形県)の立石寺を訪れ、この句を詠んだといわれています。

「閑さ」とは真逆の「蝉」「声」。そこに「岩」を結びつけることで、静かな雰囲気に浸っている芭蕉の様子がありありと伝わってくる。やはり、すごい歌であるなぁと見るたびに感性が刺激されるようです。

蝉の声といえば幼いころ、畳の部屋で寝っ転がっているときによく聞こえてきたことを思い出します。外で遊んでいるときは自分と蝉の声が重なり大音量のBGMになっているのであまり意識しないのですが、「ちょっとひと休み」と動きを止めたときにふと、心地よく響いてくる。夢かうつつかウトウトしながら、蝉の鳴き声が近くなったり遠くへいったり...。
この感覚はもしかしたら、芭蕉が感じたものに通ずるものがあるのかもしれないなぁと勝手に思っています。

今年の初蝉は、いつ、どこで聞けるのでしょうか。
蝉も自分も移ろいながら、今年も無事に夏を迎える瞬間を大切に過ごしたいなぁと思います。

参考

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高根恭子

うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。

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