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花衣はなごろも

季語 2025.03.31

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

皆様は、今年の春、お花見の予定があるでしょうか?
桜と言っても早咲きのものから遅咲きのものまで種類がたくさんありますから、すでにどこかで桜を見ながら楽しく過ごした方もいらっしゃるかもしれません。

さて、今回ご紹介するのは、春の季語としても有名な美しい日本語、「花衣(はなごろも) 」です。
「花衣」という言葉は、もともと「桜襲(さくらがさね)」と言って、白の表地と主に紅などの裏地を使って色を溶け合わせた、着物の合わせを指していました。
濃い裏地をそっと白に透けさせることで淡くやさしい色合いを楽しむなんて、重ね合わせを楽しむ着物ならではの、とっても美しい色彩表現ですよね。

しかし、時代とともに言葉の意味も少しずつ移り変わり、江戸時代には女性たちの間で流行した「花見小袖」のことを「花衣」と表現したのだとか。
確かに、記録に残された当時の花見小袖の絵を見ると、その華やかさはお正月以上だったようです。
江戸時代のお花見は、女性たちにとって、気合いを入れておしゃれを楽しむ一大イベントだったのですね。

そして現在では、お花見の時に着る着物を総称して「花衣」という言葉を使うようになりました。
いずれにしても、春の訪れを心から喜び、誰もが思い思いに「花衣」で美しさや嬉しさを表現したのだということがよくわかります。

たしかに、着物の世界は大変奥が深いもの。季節ごとに相応しい色や模様などがあることはもちろん、出かける場所や一緒に過ごす相手によっても、細やかな配慮や想いを込めて身に着けるものを選ぶ、日本ならではの繊細で美しい文化です。

出かけるときの装いにも、自分自身の「想い」を込め、相応しいと思うものを選ぶということ……。
「花衣」という日本語を通じて改めて感じるのは、ひとつひとつの物事や相手、一期一会の瞬間を、日本人は大切にしながら生きてきたんだな、ということです。

ファストファッションの多い現代、私たちにとって服装に関する「悩み」が減っているのは大変楽で合理的でありつつも、着物という和装の中にあるような「装いを楽しむ」という側面があまり見られないのは、少し寂しい気もしますよね。

毎日のように服装に悩むことはつらいものですが、たまには自分なりに想いを込め、全力で表現したおしゃれを楽しむ瞬間も作りながら生きていきたいな……とも思うのです。
人生や日々の暮らしの豊かさは、そういった手間暇のかかる部分にこそ現れてくるものかもしれません。

さて、皆様にとっての「花衣」は、どんな装いでしょうか?
お花見は、大げさな言い方をするなら、「自然界とのコラボレーション」とも言える機会ですよね。
今年も春を楽しみつつ、服装で自分自身を表現する機会を作ってみてはいかがでしょうか。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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