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梅雨の月つゆのつき

季語 2025.06.10

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

六月も半ばとなり、各地では雨模様の日が増えてきた頃でしょうか。
梅雨と聞くと、じめじめとした空気やどんよりと重たい空をイメージすることが多いものかもしれません。
日中の曇り空はもちろんですが、夜になっても明るい月や星になかなか出あうことができないのは、残念なものですよね。
しかし裏を返せば、そんな季節だからこそ、思いがけず美しい月の姿を見ることができたときの嬉しさはひとしおです。

今回ご紹介する「梅雨の月」という言葉は、夏の中でも「仲夏」と呼ばれる時期を表現する季語のひとつ。
現在の暦で言えば、雨続きの6月頭から7月頭頃に見ることのできる月を指して呼びます。

長雨が続くと、いつしか夜空に月の姿を探すことも減り、月見を楽しもうという発想すら忘れてしまいそうになります。
それだけに、時折晴れた日の空に美しい月が出ていることに気が付くと、めったに逢えない大切な人との遭遇のような、特別感や幸福感が味わえるものかもしれません。
そればかりか、雨の日の雲間に見え隠れする、ぼんやりと雨に滲んだ月の姿ですら、味わい深くありがたいものに思えるのではないでしょうか。

こんな季節だからこそ、月のありがたみや存在の大きさが、しみじみ感じられるということも、この「梅雨の月」という言葉には込められている気がしてなりません。
ましてや、しばらく姿を見かけていなかった相手との再会となると、より安らぎを感じるものかもしれません。
俳句の中に登場する「梅雨の月」にも、きっとそんな「思いがけない遭遇による喜び」や「大切な存在に焦がれる想い」などが見え隠れしていて、言葉の世界に奥深さをもたらしているのでしょう。

思えば、月という天体そのものは昔も今も年中変わることなくあり続けるものですが、私たちの暮らす地球の、日本という国でしか見ることのできない月の姿があるでしょうし、季節ごとにもその一瞬一瞬にしか見ることのできない月の姿というものがあるはずです。
それから、そんな月を誰と一緒に、どんな気持ちで見上げているのか……ということも。これらもすべて、まさに「一期一会」ですね。
私たちの生きる世界は、そんな「一期一会」の繰り返し。当たり前のように思えるすべてが、本当は特別なことなのでしょう。

だからこそ、「今だからこそ感じられること」や「その瞬間にしか得られない想いや体験」を、いつもどんな時も、身の回りにある自然の姿が彩ってくれることを感じたいですね。
今年の梅雨も、美しい「梅雨の月」に出会えることを、そっと祈りたいものです。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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