暦生活より新発売のスティックタイプのお香(お線香)、「香綴(こうつづり)」をご紹介いたします。
題材としたのは、平安朝を代表する二大女流文学、『枕草子』と『源氏物語』。
スティックタイプのお香は合成香料を使用しているものも多いですが、香綴は沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)などの天然の伝統香料をふんだんに用いて、華やかな平安文学の世界観を表現しました。
こちらの特集では、「香綴」が出来るまでの過程や職人さんの技術と想いをご紹介いたします。
香綴の特集 第一回「香りで綴る、物語」、第二回「お香の歴史と二つの物語」はこちらからご覧ください。
お線香ができるまで
お盆やお彼岸などで欠かせないお線香。
近年は、スティックタイプのお香(お線香)を焚いてリラックスタイムを楽しむ方も増え、注目度が高まっています。
そんなお線香がどのようにして作られるのか、みなさまはご存知でしょうか?
スティックタイプのお香(お線香)は大まかに、①香原料の厳選→②調香(香り創り)→③製粉→④調合(ふるい)→⑤攪拌・練り→⑥押し出し→⑦盆切り→⑧並べ→⑨板寄せ→⑩乾燥、といった工程を経て、みなさまのお手元に届いています。
香綴を制作するにあたり、今回は一部の工程の内容を、実際に職人さんの工房にお伺いして取材をさせていただきました。
今回ご紹介する内容はもちろん、その他の工程にも職人さんの技とこだわり、魂が込められています。
職人さんのこだわりを知ると、より豊かなお香体験ができるかもしれません。
ぜひ、最後までご覧ください。
天然香原料の厳選〜長川仁三郎商店さんによる本物の香り〜
今回、香原料の厳選にご協力いただいたのは長川仁三郎商店さん。
長川仁三郎商店さんは、安政元年(一八五四年)の創業以来、古来より伝わる日本の伝統の“香”を創り続けておられ、伝統の香りを後世に引き継いでいくために、職人から職人へと継承されてきた“技術”を守り続けていらっしゃいます。
良い香りの製品を作るためには、良い原料が欠かせません。長川仁三郎商店さんは香原料の卸問屋さんでもあり、香りの筋や強さ、焚いた時の香りの出方など、良質なお香を作るために検査を行い、香りの品質を見極めて原産地より厳選した上質な香原料を提供してくださっています。
調香(香り創り)〜平安時代当時を思わせる調香〜
お香は沈香と呼ばれる香木をより良くするために漢方原料を用いて古来より調香されてきました。現代では主役が沈香だけでなく、白檀など様々な主役を引き立てる香りが求められるようになっています。
今回は伝統的な製法を守りながら二大女流文学をテーマにしつつ、平安時代に使用されていたお香を現代の風にアレンジして調香していただきました。
調香師さんは「日常のほっとしたい時に寄り添う」ことを大切に、使われる方を想いながら心を込めて香り創りをくださっています。
調合(ふるい)〜香りを決める繊細かつ丁寧な工程〜
ここからは、いよいよ工房の取材です。
工房に入ると良い香りがすると共に、袋に入った沢山の香原料が目に入り圧巻されます。
次に目に入ったのは明治時代から今に至るまで現役で使われているという原料棚。
中にはお焼香用の香原料が入っており、時を経てもなお大切にされていることが伝わります。
調合では初めに調香した時の香りになるよう、製粉した香原料を混ぜ合わせてしていきます。
少しの分量の違いで想定と異なる香りになってしまうため、分量を守ることが大切な繊細かつ丁寧な工程です。
10kgもの粉が入る大きなボウルに香原料をふるい入れ、香原料をどんどんと混ぜ合わせていきます。
香原料を混ぜ合わせたら、そこから2回ふるいにかけ、香原料の偏りが出ないよう丁寧に丁寧に均一化していきます。
60kgなどの注文も多く、そのような場合は6回にも分けてこの作業を行うそう。
繊細さと根気が必要な大変な工程です。
調合の工房から淡路島の工房へ
ここからは、淡路島の別の工房へと移動します。
淡路島は玉ねぎが有名ですが、実はお線香の生産量が全国一位なのです。
淡路島でお線香の生産が盛んになった背景には、推古三年(五九五年)に淡路島に沈香の流木が漂着したという由来があります。
日本で最初に香木が漂着したとされる地には、枯木神社がありますので、淡路島にお越しの際はぜひお立ち寄りください。
攪拌・練り〜職人さんの見極めが重要な工程〜
ここからは攪拌・練りの工程。
椨(たぶ)の木の粉末である椨粉と調合した香原料を混ぜ合わせていきます。
椨粉とは、お線香を線状に形成するための「つなぎ」の素材です。
椨粉と香原料を混ぜ合わせる際には、「混練機」という、「混ぜる」「潰す」「練る」「つく」の複数の作業を同時に行う機械で均一化していきます。
椨粉と香原料が均一になってきたら、水を加えて練っていきます。
この時加える水の量は、仕上がりに非常に重要。
その日の湿気なども加味して、職人さんが繊細に調整を行います。
水を加えることで、さらさらとした粉の状態から、だんだんと塊になっていきます。
原料の量によって、ぐるぐると回る「太鼓」と呼ばれる部分の高さを変えて、適切な圧をかけていきます。
まとまりが出てきたら、随時エアダスターで機械に残っている粉末を飛ばして、さらにまとめていきます。
色が均一になり、一体化してきたらあと少しです。
最後に、塊を取り出して粘度などを確認しながら、職人さんの手で練り上げていきます。
ここまでの作業は30分ほど。
手早く作業をする理由は、出来るだけ香りが飛ばないようにという職人さんのこだわりです。
写真ではお伝えすることが叶いませんが、練り上がったものを割ってみると、ふわりと細い糸を引く様子が微かに見えます。
この粘りがあることで、お線香が折れにくくなっているのです。
押し出し・盆切り〜繊細かつスピーディーな職人技〜
今回、香綴は少量生産のため足踏み式の押し出し機で制作いただいています。
足元にあるペダルを踏むと、練ったものが線状に押し出されてきます。
この工程を「押し出し」といいます。
そして、これから行うのが「盆切り」という工程。
押し出してちょうど良い長さになったら、板を下に添えて掬い上げます。
この時に使用する板は、乾燥した時の縮みも計算してサイズの設計をされているそうです。
板をガイドに、上下の部分をカットして切り揃えます。
線が曲がらないよう真っ直ぐに保ちながら、カットする刃の角度や力の入れ方にも注意を払うのは大変難しいのですが、非常にスピーディーに作業されており、職人技に感動しました。
盆切りに挑戦
取材していた暦生活スタッフも盆切りに挑戦させていただきました。
もちろん、盆切りをするのは初めて。
刃の角度や力の入れ方、一本一本切るようにとアドバイスをいただきながら作業してみましたが非常に難しく、線も曲がってしまいました。
手がプルプルと震えながら慎重に作業したため、時間もかかってしまいます。
スピーディーに作業されている中に、職人さんの熟練の技が詰まっているのだと、身を持って体験することができました。
並べ・板寄せ・乾燥〜お線香の仕上がりを左右する最終工程〜
盆切りが終わると、1枚の大きな板にお線香を並べていきます。
そして、お線香同士を隙間なく並べていくのが「板寄せ」と呼ばれる工程です。
ここで真っ直ぐに整えることで、乾燥する際も綺麗に仕上がるのだそう。
しかし、お線香はまだ乾燥前の柔らかい状態。
思わず息を止めてしまうような慎重な工程です。
暦生活スタッフも板寄せに挑戦させていただきました。
盆切り同様、「真っ直ぐ」「綺麗に」整えていくのは非常に難しく、こちらもやはり時間がかかってしまいました。
最後は職人さんに整えていただき、綺麗に整列した状態で乾燥へと向かいます。
乾燥の工程も生産量の違いによってそれぞれに一番適した方法を模索されています。
香綴は、整列させたお線香を乗せた板の上に重しを置き、線香が曲がらないようにしながら、乾燥室で一気に乾燥させます。
職人さんのこだわりと想いが詰まった『香綴』
今回取材させていただいて感じたのは、「お客様に納得して喜んでいただきたい」という職人さんの想い。
伝統的な製法を守りながらも、日々アップグレードしながら、技術を研鑽されている姿に感銘を受けました。
香綴は今回のために調香していただいた唯一無二の香りで、その1本1本に職人さんのこだわりと魂がこもっています。
今回の特集を通して、香綴を焚いた時に職人さんの想いも感じていただけますと幸いです。
香綴の香りを実際に体験できる「京都 恵文社・暦生活展」
京都「恵文社・一乗寺店」にて2日間限定で開催します
12月13日(土)・14日(日)に行われる暦生活展では、今回ご紹介した「香綴」はもちろん、カレンダーや手帳、「暦のあゆみ」「和菓子IROAWASE靴下」など、この日のために用意した企画展示もご紹介。
「香綴」のコーナーでは、香原料〜商品完成までの過程の展示や実際にお香を聞いていただける体験コーナーもございます。
展示をめぐり、商品を手に取り、“わたしだけの暦”と出会える2日間。京都・恵文社にて、みなさまのお越しをお待ちしています。
イベント詳細
会期:2025年12月13日(土)〜14日(日)11:00〜19:00 ※14日は17:00まで
会場:恵文社 一乗寺店(京都市左京区一乗寺払殿町10)
交通:
●叡山電鉄「一乗寺駅」から徒歩3分
●市バス「高野」あるいは「一乗寺下り松」から徒歩10分
※専用の駐車場はございませんので、お車でお越しの際はお近くの有料駐車場をご利用ください。
※「入場無料」のイベントになりますので、ぜひお気軽にお越しください。
番外編:いのりとかおり お香フェスティバル
今回ご協力いただいた長川仁三郎商店さんは、毎年春と秋に大阪で「いのりとかおり お香フェスティバル」を開催されています。
お香の手作り体験や匂い袋づくり、貴重なお話が伺えるトークショーなどお香に関する体験が盛りだくさん。
お香に興味を持たれた方は、ぜひお気軽に遊びに行ってみてください。
今回、暦生活スタッフも各種体験やお香のトークショー参加等貴重な体験をさせていただきました。
あなたの香りの匂い袋
お線香づくり
お香のトークショー
お香のトークショーでは、香道御家流師範の先生やお線香メーカーの社長をお招きして、香道のお話からお線香づくりの裏話などを交えながら、貴重なお香を聞く体験をさせていただきました。
香道の世界では席が終わる際に「香満ちました」と仰るそうです。
この表現は、お香で空間も服も心も満たされることを意味するそうで、非常に素敵な言葉だと感じました。
「香綴」でも、みなさまに「香が満ちる」ことを体験していただけますと嬉しいです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
今回ご紹介した「香綴」の商品ページもぜひ併せてご覧ください。
