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入梅にゅうばい

暦とならわし 2020.06.10

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こんにちは。気象予報士の今井明子です。
最近どんよりと天気がいまひとつの日が続きますね。
いよいよ雨の季節の到来です。

本日のテーマは「入梅」。
暦の上で梅雨が始まる日とされています。

「入梅」と「梅雨入り」は混同されがちですが、実は定義が違います。

まず、「梅雨入り」とは気象庁が発表するものです。雨や曇りの日が続き、その後もしばらく似たような天気が続くと予想されるときに、地方ごとに発表されます。
梅雨入りは沖縄地方や奄美地方を皮切りに、原則して北に行くほど遅く発表される傾向にあります。また、天気の状態によって梅雨入りの日は変わるため、同じ関東地方であっても、5月下旬に梅雨入りする年もあれば、6月中旬に梅雨入りする年もあります。四国地方では、1963年に梅雨入りしなかったという記録も残っています。

その一方で、「入梅」というのは、太陽黄経(太陽が天球上を通る経路)上で春分の日を0°とすると、ちょうど80°のところに太陽がくる日のことを指します。
(ちなみに、二十四節気とは、春分の日から太陽黄経を15°ごとに等分した場所に名前をつけたものです)
太陽の軌道をもとに決められているので、入梅の時期は天候状態がどうであろうと、どこの地方であろうとだいたい6/10頃と決まっていますし、入梅の来ない年はありません。

気象庁の発表のほうが私たちの実感と近いので、暦上の入梅は必要なさそうに感じるかもしれません。しかし、昔は今ほど天気予報が発達していなかったので、田植えの日を決める目安として入梅という区切りが重要だったのでしょう。

梅雨は、オホーツク海で発生する、冷たくて湿った空気で構成されたオホーツク海高気圧と、高温多湿な太平洋高気圧がぶつかりあうことで発生します。
ふたつの高気圧の境目には停滞前線(梅雨前線)ができ、前線付近に雲が発生するので、雨が降り続きます。

なお、梅雨前線は日本列島を横断するように長く連なっていますが、西と東では性質が違います。東のほうは、先ほど説明した通りオホーツク海高気圧と太平洋高気圧がぶつかり合うことで前線ができるのですが、西のほうの前線は、大陸の暖かくて乾いた高気圧と太平洋高気圧とがぶつかり合うことでできます。
東日本の梅雨はしとしとと降る雨が続き、ひんやりとしているのに対し、西日本の梅雨は集中豪雨になりやすいという性質があるのです。

この季節の長雨をなぜ「梅雨」というのかを知りたい人もいることでしょう。
これには諸説ありますが、もっともよく知られているのは、ちょうど梅が熟す頃に降る長雨という説です。また、雨が続くことでカビが生えやすいことから「黴雨(ばいう)」という言葉が使われていたものの、「黴」という語感が悪いので「梅(ばい)」に変わったという説もあります。

いずれにせよ、ここから約1か月は、雨の降り続くことの多い季節になります。
雨ばかり降るのは気がめいりますが、作物にとっては欠かせない雨。もしこの時期の前線活動が活発でなかったり、早く梅雨が明けすぎたりしてあまり雨が降らないと、「空梅雨」と呼ばれて夏に水不足を引き起こします。

雨の季節は憂鬱ですが、アジサイや花しょうぶは、雨模様のもとでこそ映える花だと思います。
散歩がてら、梅雨の花見を楽しむのも一興ですね。

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今井明子

サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。

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