こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
日本一の高さを誇る山として、この国を象徴する存在とも言える「富士山」。
江戸時代以前は、もちろん今のように高い建物はありませんでしたから、天気が良ければ遠く離れた場所からも拝することができたといわれています。
しかし、私たち日本人が古くからこの山を愛し大切にしてきた理由は、「日本一の高さ」というだけの理由ではないように思います。
数多くの画家がモチーフとして描き、写真家が四季折々の姿を切り取ってきたに違いない富士山ですが、日本人の心に深く残る美しい風景でありながら、どの作品を見ても「同じ印象」であることはありません。
その雄大な姿は見る方角や季節、そして天気によっても様子を変えながら、それぞれの人の心にさまざまな想いを浮かび上がらせてくれるような気がします。
日本では、あらゆる物に神様が宿るという神道的な考えのもと、各地で大岩や樹木など自然そのものを御神体としてお祀りしていることが多いです。
中でも「山」は、その大きな姿を丸ごと御神体として崇めて、自然に対する畏敬の念を抱く日本人にとって重要な信仰となってきました。
もちろん、富士山もそのひとつです。
富士山には、その麓に富士山本宮浅間(せんげん)神社があり、山頂にも同神社の奥宮(おくみや)があります。
皆さんは、この神社にどのような神様がお祀りされているかご存知でしょうか?
富士山の姿からはどこか雄々しい神様を想像したくなるかもしれませんが、実はこの場所には「木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)」という、名前の通り美しい花を象徴する女神様がおられます。
この神様は日本の山の神様を代表する「大山祇神(おおやまづみのかみ)」の娘にあたるため、山の神様としての側面はもちろん、神話の中で情熱的とも言える強い母性の力を発揮したことから、子授け・安産の神様としても親しまれています。
町中で暮らしている人からすると「山の神様」は少し遠い存在のように思えるかもしれませんが、命を生み出す女性の強さや子孫繫栄を象徴する神様という顔は、日本人にとって大地の母のような存在である気がしてなりません。
ところで、日本には「一富士二鷹三茄子(いちふじ、にたか、さんなすび)」という言葉があり、初夢でこれらを見ることができると大変縁起が良いとされています。
富士山が日本人の中で「縁起の良い存在」として大切にされているのも、人生の目標や展望を暗示し、運命や導きなどをもたらす山であるからともいわれています。
人生の道のりは時に山登りに例えられることがありますが、人は時に無心で山に登り、自然と体ひとつで向き合うことで得られるものもあるのではないでしょうか。
ぜひ一度は、日本一の山・富士山を登拝しておきたいものですね。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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