こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
神社に足を運ぶと、さまざまな場所で「鈴」の存在を見かけることがあります。
それもそのはず、神道の世界では神聖さを宿したさまざまな「音」が、邪気や魔を祓い退けるとされ、その文化や作法の中に取り入れられているからです。
たとえば、玉砂利を踏みしめる音や神事の際に打ち鳴らす太鼓の音、参拝者による柏手の音など……。鈴以外にも、さまざまな音に出会うことができることでしょう。
神社で出会う鈴には、たいていの場合2種類あります。
一つ目は、参拝者がお賽銭を入れて神様に手を合わせる拝殿(はいでん=参拝を行う場所)で、頭上に吊るされている大きな鈴「御鈴(みすず)」というもの。ちなみにこの鈴から垂れ下がっている紐を「鈴緒(すずお)」と呼びます。
参拝者がこの鈴緒を揺らすことで御鈴が鳴る仕組みになっていて、これは参拝の前に神霊を呼び出す神聖な意味があるのです。人間の世界で例えるとすれば、玄関にあるインターフォンのような役割であるとも言えますね。
それと同時に、その鈴の音が参拝者の罪穢れを祓い清めてくれる、一種の「禊(みそぎ)」のようなものでもあるわけです。
そして、神社で見かけることの多い二つ目の鈴は、神職や巫女が神事の際に用いる「神楽鈴(かぐらすず)」というもの。
たとえば厄除け祈願、お子様の初宮詣や七五三など。さまざまな人生の節目を迎えた感謝や、さまざまな願い事を神様にお伝えするため、昇殿(しょうでん=神社の社殿の中に昇ること)をして神職に御神前で御祈祷をあげてもらう際、目にする機会が多いのではないでしょうか。
御祈祷の中では、参拝者の頭上に清らかな鈴の音を注ぎ、その心身から災いを退けて福を招くことを祈り願う「鈴振りの儀」というものを行っています。
神楽鈴はそれだけでなく、巫女が御神前で神様に捧げる舞「神楽舞」にも使われることがあります。
巫女の舞と共に鈴の音が響くたび、たとえ目には見えなくとも、その空間一帯が音の力で清らかになってゆくような気がしてなりません。
このように、日本には古来から「音」の持つ力を信じる文化が根付いていたのですね。
御守りにも小さな鈴がついていることがよくありますし、縁起物のひとつとして干支の「土鈴(どれい)」などを飾っているお宅もあることでしょう。
あなたの身近には、どんな鈴がありますか?
その鈴も、時にはそっと揺らして、音を鳴らしてみてくださいね。もしかすると、その音が知らぬ間にあなたの周りを清めてくれて、心地よい気持ちにしてくれるかもしれません。
また人生の中で、自分の好きな音色を奏でてくれる鈴との出会いを探してみるのも、素敵なことですね。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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