こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
♪もういくつ寝ると、お正月……
皆様は、こんな歌い出しの「お正月」という童謡をご存知でしょうか?
その歌詞の中にも登場する、凧揚げの凧。
お正月ならではの子どもたちの遊びのひとつとして、かるたや羽子板に並んで人気を博していました。
しかし、あちこちに電線が張り巡らされ、空の開けた場所が少なくなってしまった現代では、残念ながら実際に遊ぶことはもちろん、見かけることも少なくなりつつあります。
その作りや形、絵柄なども、時代や地域によってさまざまなものが誕生してきました。
基本的には、細くて軽い木や竹の骨組みに、紙や布やビニールを貼り長い紐を取り付け、風を受けて高く飛ばせるようにしたものを言います。
紙の鳶(とび)、と書いて「紙鳶(しえん)」という名前だった凧は、平安時代の頃に中国から伝わってきたと言われています。
本来は、病気や魔物などの災厄が風に乗ってやってくるのを防ぐ「厄祓い」の意味で使われていたものが、いつしか日本では縁起のよい遊び道具として広く親しまれるようになりました。
お正月の遊びとして定着した理由は、立春の時季に空を見上げると健康に良いとされていたことから、子どもの健康や健やかな成長を祈願する意味も込められていたようです。
たしかに、新年早々空を見上げながら楽しく遊べる凧は、とても晴れやかで希望を感じさせてくれる気がします。
今でこそ凧揚げは子どもの遊びとして定着していますが、かつては貴族の遊びや武士の連絡手段など、さまざまな形で活用されてきました。
その過程で、「紙の鳶」だったはずの名前が「凧」になっていった由来をひも解いていくと、ちょっとクスッと笑ってしまうエピソードがあります。
江戸時代の頃になると、ひらひらと風になびく足のような飾りが付けられるようになったことで、いつしかその見た目を指して「いか」と呼ばれ、遊びの名前も「いかのぼり」と言われるようになっていたそうです。
しかし、庶民の間で大流行した「いかのぼり」は、通行の妨げになったり、怪我や喧嘩などにも繋がったりしてよろしくないと、ある時幕府に禁じられてしまいます。
しかし、どうしても「いかのぼり」がしたい人々は、「いか」の足を八本に増やして「これはイカじゃなくてタコだ!」と言い張ったのだとか……。
今では「凧揚げ」の方が広く知られた名前になっているのは、なんとも不思議でおもしろいお話ですね。
ともあれ、私も小学生の頃に凧揚げをしたことがありますが、よい風を受けるほど高く揚がる凧は、上手に飛ばせるととても清々しく、晴れやかな気持ちになれたのを覚えています。
考えてみれば、スマートフォンなどが普及するにつれて、私たちはいつでも手元を見ながらうつむきがちに過ごしているような気がします。
そんな時代だからこそ、空を見上げることの心地よさを思い出したいものですね。
今は凧揚げが許される場所も限られてしまっていますが、子どもたちにも一度は思いきり空高く、縁起物の凧を揚げてほしいと思わずにはいられません。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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