こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
「かわたれ」――多くの方にとって、あまりなじみのない言葉なのではないでしょうか。
これは「かわたれ時」とも言い、漢字にすると「彼は誰時」と書きます。
意味は、まだ薄暗く、周囲の人や物がはっきりと見えない時間帯のこと。多くは、明け方を指して使う言葉です。

そう、気づいた方もいらっしゃいますね。これの対となるような言葉が、「たそがれ」です。
「黄昏時」は夕暮れの時間、空の色が次第に暗く深まってゆく中で、その景色を夕日が照らし出す頃のこと。
語源は、「かわたれ=彼は誰」とよく似た、「誰ぞ彼(たれぞかれ)」という言葉です。

考えてみれば、これらは誰がどんな光景を思い浮かべながら、はじめて口にしたのでしょうか。
少しずつ日が沈み、周りが暗くなれば相手の顔が見えづらくなります。そこで、昔どこかの誰かが「あの人は誰だろう」「あなたは誰ですか」と訊ねたことから、生まれたのかもしれません。

明け方や、夕暮れの頃。
遠くに見える人影が愛しい「誰か」なのではないかと、胸を高鳴らせるようなロマンチックな思い出がどこかに存在したのかなと思うと、ワクワクしませんか?
たったひとつの言葉で、映画やドラマのワンシーンのような場面を想像したくなるのは、きっと私だけではないはず。

現代の日本には、夜でも昼間のように明るい世界が、あちこちに存在しています。
でも、もしかすると私たちは暮らしの便利さと引き換えに、こういった時間や季節の移ろいには、少しずつ鈍感になってしまっているのかもしれません。

言葉も、ある意味では「生き物」のような存在です。
時代とともに姿形を変え、時には新しく生まれたり古いものが滅んだりと、移り変わってゆくもの。
それでもこういった、使い手の心が想像できる美しい日本語の表現は、未来の世界にも残していきたいと思ってしまいます。

実際に口にしたり書いたりすることで、人から人へ、後の時代まで残してゆくことができるのが「言葉」です。
これからは、明け方を眺める時には「素敵なかわたれ時だなぁ」とつぶやき、夕暮れを眺める時には「美しいたそがれ時だなぁ」と口にしたいものです。
皆さんも「かわたれ」をお気に召していただけたら、その言葉をぜひ、心の引き出しにしまっておいてくださいね。
ときどき取り出して、実際に使ってみていただけたら、とてもうれしく思います。

紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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