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暑気払いしょきばらい

暦とならわし 2023.06.25

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

梅雨入りを迎えると、気候はあっという間に蒸し暑さを感じるものに変わってきます。
まだ6月下旬だというのに、30℃前後の気温を記録する日も少なくありません。

これほどの暑さになれば、私たちが健やかに生きる上で、文明の利器であるエアコンは欠かせないとして……。
それでも、外気温との温度差による体調不良や、夏バテによる気力減退や食欲不振などには注意が必要です。

そこで今回は、まだエアコンなどがなかった時代から、この国で自然とともに生きてきた先人たちが考え、実践してきた暑さをしのぐ知恵と工夫の数々――「暑気払い」についてご紹介していきたいと思います。

まず、「暑気」というのは「夏の暑さ」や「暑さによる病」といった意味があり、体の中に溜まった熱気を追い払って、弱ってしまった「氣」をもとの状態(=元氣)に戻してくれる暮らしの知恵全般を指して「暑気払い」と言います。

健やかに夏を乗り切るための方法は多岐にわたるのですが、例えば体を冷やす効果のある食べ物や飲み物を口にすること、体の外から熱を冷ましてくれるような川遊びやプールや海水浴、薬湯や漢方薬を使うこと、体感的に涼を得られる風鈴や打ち水といった夏ならではの風物詩や習慣までさまざまです。

そういえば、神社でも6月末に「夏越の大祓」という神事が行われるのですが、そこでの「茅の輪くぐり」という行事も暑気払いのひとつに数えられることがあります。
これは、上半期を締めくくるにあたって、茅の輪をくぐることで半年の間その身に背負った罪穢れを祓い清め、災厄や病を打ち払うことができると伝えられているからですね。

さて、私たちにとって特に身近な暑気払いと言えば、やっぱり食に関わるものなのではないでしょうか。
食べ物に関する暑気払いは特に、東洋医学のひとつである中医学(中国の伝統医学)や漢方医学(中医学が日本で展開したもの)の知恵が結集されています。

旬の野菜としても挙げられる、トマト・ナス・ウリ系(胡瓜・冬瓜・苦瓜・南瓜・西瓜)は、それぞれに含まれている栄養素が体の熱を下げてくれたり、利尿作用があったり、夏バテ防止になるビタミンCなどが豊富であるなど、多方面から体の働きを助けてくれます。

また、ビール・そうめん・冷麦など、麦を使ったものも火照った体を落ち着けてくれると言われています。
お酒好きの方にとっては、やっぱり夏のビールは、心身ともに元氣を与えてくれるもとになるのではないでしょうか。

その他にも、夏に体が欲する食べ物や飲み物は、たくさんありますね。
鰻・梅・かき氷……。飲む点滴と言われる甘酒も、冬をイメージされる方が多いかもしれませんが、古くは夏の栄養ドリンクとして売られていました。
地域によって挙げられるものとしては、西日本における冷やし飴や、各地で郷土料理として独自のレシピが存在する冷や汁なども良いですね。

夏の暑さに良いとされる食は、こうやって習慣として受け継がれた文化や、美味しい食べ方飲み方が編み出されたことによっても、私たちの日常に浸透し伝えられてきたのだと感じます。
昔を生きていた人たちは、体と心が喜ぶものを自然に手に取り、理にかなったその活用方法を的確に残してきてくれたのですね。

内側から暑さに打ち勝つ「食」の知恵意外にも、水に触れる心地よさや、風を感じる音の涼である風鈴など――外から涼しさを得るさまざまな物事を楽しむことも、暮らしの中で実践していきたいものです。
寒いときほど温かいものが心と体に沁みるように、暑さに苦しむときは涼しさを感じる楽しみを見出すチャンスでもあるのかもしれません。

今や、たくさんの選択肢がある「暑気払い」。皆さんは、何が気になりましたか?
自分のライフスタイルや好みに合わせて、夏を思い切り楽しみ、暑さを味方に変えてしまうような素敵な「暑気払い」の方法を見つけてみてくださいね。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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