こんにちは。星空案内人の木原です。
進級、卒業式など新しい春に向かっていく時期ですね。宙の世界でも、冬の星座たちが春の星座に主役の座を譲り始める頃です。冬のダイヤモンドの1つ、ポルックスから少し東寄りに目線を向けると、白くぼんやりとしたものが宙に浮かんでいるように見えます。その正体は、かに座にあるプレセペ星団。

数百個もの星が集まった天体で、肉眼で見ると白い毛玉のように見えます。春を連れてきましたよ、と昇ってくるかに座。しかし、かに座を構成する星はどれも暗くて目立ちません。代わりに、プレセペ星団がかに座を見つけるときの目印となっています。
世界各地で、古くからプレセペ星団が観察されていたことが分かっています。中国の天文書では「色白く粉絮(こなわた)の如きもの」と表現された記録が残っていて、プレセペ星団の白く淡い姿を上手に表現されているなぁ、とその言葉選びに感動します。

しかし中国では、プレセペ星団の淡い光が人魂のように見えることから、「死者の体を積み重ねたところからでる気」という意味の「積尸気(ししき)」と呼ぶ方が一般的に知られていて、プレセペ星団があるかに座は二十八宿(中国版の星座のようなもの)では霊を表す鬼宿と名付けられています。
プレセペ星団の姿を霊魂に例えていた記録は他にもあり、古代ギリシアの哲学者プラトンとその門下が星団のことを霊魂の出てくる門と表現しています。
命とは不思議なもので、天から授かり天へ還っていく考え方の拠り所を、天に広がる星たちに見出していたのかもしれません。

少ししっとりした話になってしまったので、春らしい話題を紹介します。英語ではプレセペ星団を「Beehive(ハチの巣)」と呼びます。ちょうどこの時期から活動し始めるハチたちを思い浮かべると、春にぴったりな呼び名だと思いませんか。
「プレセペ」はラテン語で「飼葉桶」という意味で、星団の両脇にある2つの星をロバに見立てて、ロバが桶から餌を食べている様子を思い描いて名付けられています。春になって餌を元気よく食べるロバを想像すると、とても可愛らしく思えてきます。
科学的に考えれば、「プレセペは星の集団」が正解ですが、それを人魂と見るかハチの巣やロバの餌桶と見るかは自由です。天文学が発展してきた歴史があるように、人間の想像力から星空の文化が作られてきた歴史もあります。どちらも人間と星空が生み出したかけがえのない産物です。

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