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かに座

月と星 2024.03.08

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こんにちは。星空案内人の木原です。
冬の味覚として親しまれているカニ。限りある資源を守るため、日本海側でのベニズワイガニの漁期は春を迎えると次の冬までお休みになります。その代わりに登場するカニが春の星座のかに座です。この時期は21時頃に南の宙高くにかに座が昇っていて、海のカニから宙のカニへとバトンタッチが始まっています。

写真提供:木原美智子

カニのよく親しまれているイメージは、チョキチョキとハサミを動かす可愛らしい姿ではないでしょうか。かに座のモチーフになったのはギリシャ神話に出てくる怪物の大蟹。星座絵によって姿は様々ですが、どんな怖い雰囲気の絵でもフォルムにどこかカニ本来の可愛らしさが残っていて、怪物らしからぬ親しみさえ感じられます。そして、さらに愛おしいのは、かに座のエピソードです。

ギリシャ神話の1つに勇者ヘラクレスと怪物ヒドラの戦いがあります。ヒドラは9つの頭を持つ恐ろしい怪物で、泉に毒を流して人々を困らせていました。ヘラクレスはヒドラを倒そうと戦いに挑み、いよいよヒドラを追い詰められるところまで来た時に登場したのが大蟹でした。大蟹は友達であるヒドラを助けようとヘラクレスの足を自慢の爪で挟みます。しかし、その勇気は報われずヘラクレスは“何か足にくっついたかな?“程度。カニを振り払い、そのまま足で潰してしまいました。その様子を見ていた女神ヘラが、友達想いの大蟹の気持ちを救ってあげようと天にあげ、かに座が誕生したのです。

自分よりも圧倒的に強そうな相手を前にしても、友達のために勇気を出して行動に移せる姿はとても感動的なのですが、ヘラクレスにあっけなく踏まれてしまった間抜けな一面が伝わるこのエピソードがなんとも愛おしく思います。

そんなかに座は、海のカニが岩陰でひっそり暮らしているのと同じように、実際の夜空でもあまり目立ちません。ただ、かに座にはプレセぺ星団という魅力的な天体があります。プレセペ星団のお話は別のコラムで紹介していますので、よろしければご一緒にどうぞ。

写真提供:木原美智子

かに座の体の部分に位置するプレセペ星団は、まるでカニの甲羅に生える苔のようにも見えます。もしかしたら大蟹はヘラクレスがやってくるまで、とても長い時間を友達と過ごしていたのかもしれません。カニの住処は地上から宙に変わりましたが、宙でも同じようにじっと周りを見つめ、いつか自分の爪を役立てる日が再び来るはずだ、と待っているのでしょうか。

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木原美智子

星空案内人
広島県出身。瀬戸内の宙を見て育ちました。好きな季節は、コスモスが咲き、凜とした空気が漂う秋。宙を見上げるのが好きなので、星だけじゃなく宙にあるもの、宙に関わる文化に興味があります。ペンギンと野球も好き。

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