こんにちは。星空案内人の木原です。
地上の景色も宙の様子もすっかり秋めいてきました。ギラギラとにぎやかだった夏の夜空はそろそろ休憩。落ち着いた秋の夜空が主役になってきています。この時期の21時頃、南の空の低い位置に、みなみのうお座にあるフォーマルハウトという星が輝いて見えています。
フォーマルハウトは秋の星座たちの星の中で唯一の一等星。南の低いところでひっそりと白く優しく輝く姿から、「秋のひとつ星」や「南のひとつ星」と日本では呼ばれていました。建物や山など高さがあるものが周りにあるとそこに隠れてしまうひとつ星。秋の夜空にぽつんと輝く姿をみつけたら、「ひとりじゃないよ、みつけたよ」とそっと声をかけてあげてください。
フォーマルハウトという名前は、アラビア語で「大きな魚の口」という意味があります。みなみのうお座より北に位置するみずがめ座から注がれているお酒を大きな口でガブ飲みしている様子が星座絵ではよく描かれます。星空解説では、「こんなに飲んで酔っぱらわないのか」と心配されている星座です。口元で光るフォーマルハウトが赤色ではなく白色で輝いているので、とてつもなくお酒に強いのか、もしかしたら「もう無理だよ」と嘆いているかもしれませんね。
星空の中では控えめなフォーマルハウトですが、天文学者の間ではここ数年に渡って注目されていました。
天文学者の研究テーマのひとつに「太陽系以外で惑星を見つける」というのがあります。世界中の研究者が観測を続ける中で、2008年にフォーマルハウトの周囲を回る天体が発見されました。
見つかった星は、木星の3倍ものある大きさ。大発見で盛り上がる一方、「こんなに大きいのに熱(赤外線)が出ていないのはなぜ?」と謎も出てきました。木星のような大きなガス惑星は自ら熱を放っているはず。
それが観測できなかったのです。しかも年を追うごとに、その姿が薄く広がっていく・・・。これは惑星ではないのでは?と様々な議論が交わされました。
2020年に天体の正体は「巨大な彗星同士が正面衝突した後の塵の雲」という研究結果が発表され、2023年には最新の宇宙望遠鏡によって「そこには何もない」という証拠が示されました。
見つかったのは天体ではありませんでしたが、衝突後の粉塵は、それはそれで貴重なようにも思います。フォーマルハウトは衝突事故の一部始終を冷静に見ていたのでしょうか。白い輝きは未だに沈黙を続けています。

