こんにちは。暦生活編集部です。
今日は七十二候の「鴻雁北(こうがんかえる)」についてのお話です。
「鴻雁北(こうがんかえる)」は、冬の間を日本で過ごしていた雁(がん)が北国へ去っていくころ。毎年4月9日から4月13日に訪れる短い季節の名前です。
春に飛来するツバメと入れ替わるようにして、日本を離れていく雁。
群れをなし、連なって飛んでいく姿は美しく、しばしば美術作品や文学などに登場します。
日本を去る雁はどこへ向かうのでしょうか。
それは、シベリアや北アメリカなど、日本から遠く離れた場所。春から夏はそこで子どもを産み育て、秋になるとまた日本へやってきます。
雁は翼を広げると1.4メートルにもなる大きな鳥で、宮城県の県鳥になっています。「雁金紋(かりがねもん)」として家紋になっていたり、昔からたくさんの作品に登場したり、人々にとって思い入れの深い鳥ですが、現在日本ではその数を減らし、保護鳥の対象になっています。
春の季語に「鳥曇(とりぐもり)」という言葉がありますが、これは雁や鴨(かも)など、春に日本を去っていく鳥たちが北へ向かうころの曇り空のことをいいます。また、羽ばたく羽の音が風の音に聞こえるため、そのころに吹く風を「鳥風(とりかぜ)」と。
どちらも海を渡ろうとする鳥たちの力強い姿が思い浮かぶ、風情のある言葉ですね。
もうひとつ、青森県津軽地方に残る伝説から生まれた「雁風呂(がんぶろ)」という季語があります。秋も深まり日本へやってくるとき、雁は海の上で休むための枝をくわえてきます。日本に着くとそれを浜へ落としていきますが、翌年春になり北へ去るころ、また同じ枝を拾って海を渡ります。その際、拾われていない枝が落ちていたら、それは冬の間に日本で死んでしまった雁がいるということ。村人はあわれに思い、その枝で風呂を焚き、旅人にふるまい供養したといいます。
飛来するツバメとは逆に、日本を去っていく雁。その旅路はきっと過酷で、大変なものなのでしょう。七十二候の「鴻雁北(こうがんかえる)」は、そんな雁を思いやって作られたのかもしれません。
また元気に、日本にやってきて欲しいなと心から思います。
また会える日まで、しばしのお別れですね。
※七十二候(しちじゅうにこう)は、日本の1年を72等分し、季節それぞれのできごとをそのまま名前にした、約5日ごとに移ろう細やかな季節です。
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