ヨモギを摘んで、沐浴を
暦に夏がやってきました。立夏です。
陽気としては、春から夏に移っていくころですね。新緑が美しく、暑くもなく寒くもなく、一年の中でもとりわけ過ごしやすい時季。何をするにも快適です。薫風をたっぷり感じ、心も体も生き生きと過ごしたいものです。
今年は立夏が5月5日、端午の節句と同じ日です。
端午の節句には、菖蒲を軒に挿したり、菖蒲湯に入ったりする習慣があります。剣の形をした菖蒲の葉は芳香があり、邪気払い、疫病除けとして使われてきました。
端午の節句が近くなると、お花屋さんやスーパーマーケットでも、菖蒲湯のための菖蒲の葉が売られていますね。これを買ってきて、5日の夜には菖蒲湯に入るとしましょう。
ところで、菖蒲湯用の菖蒲の束には、ヨモギの葉が添えられていることもあります。そう、ヨモギもまた薬効のある草なのですね。
この季節は、薬草採りも盛んに行われてきました。とりわけ5月5日に採る薬草には特に薬効があるのだとか。「薬草狩り」「薬狩り」といって、競って摘み草をしたそうです。
それでこの日には、不浄を払い邪気を避けるために、薬湯に入ったり、何種もの薬草を入れた薬玉を作ったりしたのです。単におまじないということではなく、実際に薬効のある草を使っていたところに、先人の知恵を感じます。
さて、数ある薬草のなかでも代表ともいえるヨモギ。人の住む近くに、ごく普通に生えている草です。花の咲く前のこの季節に、摘んでみるのはいかがでしょう。道の脇、河原の土手、公園の隅のひだまりなど、よく見ればここにもあそこにも。
このヨモギを摘んできたら、まずはヨモギ湯に。ゆっくりと入っているうちに、体がホッホとして薬効を感じます。疲れがとれて、血行がよくなるのですね。
ヨモギの実力にはなかなか素晴らしいものがあります。消炎、アレルギー、喘息にも効果があり、風邪、リウマチにも使われてきたといいます。お灸の艾(もぐさ)もヨモギが原料。ヨーロッパでも、ヨモギは聖なるハーブとして魔除けにも使われていたそうです。
まずはヨモギ風呂で沐浴して、その香りと薬効を実感してみませんか?
平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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