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七十二候/虹始見にじはじめてあらわる

二十四節気と七十二候 2023.04.15

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七十二候の「虹始見(にじはじめてあらわる)」は清明の末候、4月15日〜19日頃。これから虹がみえることが多くなる季節です。

初虹

初虹や知らせに来たる隣の子 茶静

みなさまはもう今年最初の虹をご覧になったでしょうか。「初虹(はつにじ)」は晩春の季語。いよいよ春が終わりに近づき、夏に向かっていることのサインでもあります。

「虹」は夏の季語ですが、春は「春の虹」、秋は「秋の虹」として詠まれます。春の雨は降ったり止んだり、雨粒も小さく、太陽の光も強くないので、短時間で消えてしまうことが多く、その淡いところがまたいいものでもあります。

うちの田んぼではちょうど田植えの頃、空に大きな虹がかかり、虹の橋が田んぼに突きささるようにみえることがあります。

写真提供:高月美樹

虹は龍の化身

虹という現象は、空中に浮遊する雨粒に光があたったときにみえる光のプリズム。そんなしくみはわかっていても、見つけると、うわあ、と思わず、声をあげてしまいます。

さて、自然現象である虹に、なぜ虫の字がつくのでしょうか。啓蟄のときにも書きましたが、虫という字は本来、小さな昆虫ではなく、主にヘビ(蛇)をさす言葉でした。虹は空に昇った大蛇が、龍になるときの姿と考えられていたのです。

「工」は貫くことを意味しますので、「空を貫いてかかる龍」が虹の意味になります。ちなみに朧(おぼろ)も「月に龍」ですので、龍はやはり水の化身です。

昔の人は人智を超えたものへの畏敬の念が強く、虹はあまり和歌に詠まれることがなかったようです。「虹を指さしてはいけない」という戒めは世界中にあり、長い間見てはいけない、指をさすと指が腐る、病気になる、などの言い伝えが各地にあります。神に近いものに不用意に見てはいけない、という気持ちは世界共通のものだったようです。

現代においても虹はやっぱりセンス・オブ・ワンダーです。この世の神秘に目をみはる瞬間です。7色のレインボーカラーは夢のシンボルとしてもよく使われますが、虹をみるとなぜだか生きる希望が自然に湧いてきますし、この世に生きることの喜びを感じます。

虹はいわば太陽と水滴のダンス、火と水の神遊びです。虹が見えるのは太陽と反対側。朝は西の空に、夕方は東の空に大きく上がります。

くもる日もたちまちはれて定めなき
虹はみ空の夢の浮橋 三壺

文責・高月美樹


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「自然や季節の移ろいに対する興味が格段に変わります」
「ふと自分も自然の一部だと思わせてくれる瞬間があります。ありがとうございます」

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高月美樹

和暦研究家・LUNAWORKS代表 
東京・荻窪在住。和暦手帳『和暦日々是好日』の制作・発行人。好きな季節は清明と白露。『にっぽんの七十二候』『癒しの七十ニャ候』『まいにち暦生活』『にっぽんのいろ図鑑』婦人画報『和ダイアリー』監修。趣味は群馬県川場村での田んぼ生活、植物と虫の生態系、ミツバチ研究など。

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