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二十四節気と暮らしの道具/芒種ぼうしゅ

二十四節気と七十二候 2024.06.05

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芒種 6月5日~20日 五月節〈芒ある穀類、稼種する時なればなり『暦便覧』〉

芒のある穀類を植えるとき、という芒種の節気。これは稲を植え付ける、すなわち田植えの季節を表しています。入梅間近、そろそろ梅雨の走りでパラリとくることもある時節。草木の緑はむっくりと濃くなり、空気には湿り気も帯びてきたようです。

この季節は散歩に出かけると、道端には草が繁茂して道を覆わんばかりの勢いです。そんな草むらからは、蔓草(つるくさ)が伸びているのがきっと見つかるでしょう。蔓草は生命力が旺盛です。アケビ、ヤマノイモ、スイカズラにカキドオシ。ヒルガオもそろそろ花を咲かせ始めています。

通行の邪魔になる草を刈る、という名目の元、目についた蔓草をちょいと摘んできてはいかが? 家に帰ったら、吊るすタイプの花器に活けてみます。下垂した細い蔓草は、ただ投げ入れただけでも十分風情のある表情です。

ガラスのコップ形の花器には、底にビーチグラスをいくつか沈ませて。これが茎を落ち着かせて、いわば剣山の役目をしてくれます。いくらでも生えているカキドオシを抜いてきて挿しましょうか。カキドオシという名のとおり、垣根を通り抜けて伸びる元気いっぱいの多年草なのです。葉は、干してお茶にしても。

シュロ縄で吊るタイプの花器は、手作りの土っぽい雰囲気。これはいつもトイレの壁に掛けて、小さな野の草に使っています。この季節はアケビの蔓を。明るい緑の繊細な葉が愛らしい。ヤマノイモの仲間のウチワドコロも憎たらしいほど繁るけれど、よく見れば美しい草姿。スイカズラも然り。もうしばらくすると、いい香りの花も咲かせます。

田植えの時期というだけあって、草木がぐんと成長するこの時季。入梅前後の植物の若々しさを、ぜひ間近で味わいたいと思います。山の中だけでなく、街中でもこの季節は蔓草が元気に伸びて、公園のフェンスやガードレールに絡まっているはず。目線の先に草を探して「蔓草探訪散歩」など、お勧めいたします。

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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