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二十四節気と暮らしの道具/大雪たいせつ

二十四節気と七十二候 2024.12.07

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大雪 12月7~20日 十一月節〈雪いよいよ降り重ねる折からなればなり。『暦便覧』〉

土鍋であったまる

大雪の節気を迎えて、いよいよ寒さも本番。山には雪、平地でも冷たい風が吹いています。外に出かけるには防寒着、家の中では暖房が欠かせないころとなりました。南天の実は赤く色づき、街ではクリスマスソングが鳴り響くなか、熊はそろそろ穴にもぐって冬眠にはいることでしょう。

この寒さの正体は、山から小僧が降りてきて寒気をばら撒いているのか。それとも、冬将軍がのっしのっしとやって来ているのかも。ここまできたら、肚を括って寒さを受け入れることにしなければいけません。

というわけで、暖まるためには手段を選ばず。軽くて暖かい服を着込んで、お夕飯は、身も心もあったまる鍋物でキマリです。体だけでなく、心もホカホカ。

鍋物といえば土鍋です。みなさんのお宅にあるのは、どんな土鍋でしょうか。ご家族でお住まいなら、大きな土鍋。お一人住まいなら一人用の小ぶりの土鍋をお使いかもしれません。

一人住まいの我が家では、一人用の土鍋が大活躍。湯豆腐でも鍋焼きうどんでもなんでも来い。ただ、お客さんが来たとき用の、大ぶりの土鍋もしまってあります。鍋物といえば、家族団欒の象徴のイメージがありますが、一人で食べるナベもまたどっこいウマイんです。

土鍋が活躍する鍋物といえば、おでんに湯豆腐、水炊き、牡蠣の土手鍋。葱鮪に薩摩汁あたりがクラシックなところでしょうか。以前、韓国の豪勢な手づくりのチゲ鍋をごちそうになったことがあって、これは珍しいうえに美味で辛くて、興奮しました。でも、チゲ鍋と言いながらも教えてもらったのは、ハングルで鍋をチゲと言うそうな。ということは、「チゲ鍋」では、「鍋鍋」みたいな感じになってちょっとおかしな感じですね。「鴨川リバー」と言うような。

冗談はさておき、土鍋で思い出すのは、会社員だった亡父が、大阪に単身赴任をしていたころの話です。残る家族は横浜で暮らしていましたが、母は月に一度は父が住む大阪の家に行っていました。母が大阪に着いたその日は寒くて、近所の店で土鍋を買い、鍋物の用意をして父の帰宅を待っていたそうです。そこへ帰宅した父も、やはり帰りに買った土鍋を手にしていたのだとか。二人とも、一緒に鍋を食べたいと思ったのですね。一人で暮らす父の家に、急に大きな土鍋が二つ出現したという話でした。

寒い晩はとにかく鍋であったまりたい。そして、忙しい師走を元気に乗り越えたいものです。今日は棚から土鍋を引っ張り出して、さあ鍋物の準備に取り掛かります。

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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