◎啓蟄 3月5~19日 「スミレとシロハラ」

3月に入ってひな祭りを過ぎるといよいよ啓蟄。本格的な春がまたグッと近づいてきたと感じる節気です。冬のあいだ、地中にこもっていた虫たちが、春の訪れを感じて地上へ出てくるころ。「蟄」隠れていた虫たちが、「啓」穴を啓いて出てくるので、啓蟄です。
また啓蟄のころは春雷の季節とも重なります。雷の音に驚いた虫たちが、いっせいに土中から這い出してくる、と昔の人は考えていたのだそう。雷は、目を覚ました虫たちとともに、啓蟄を象徴するもうひとつのトピックです。
まだまだ春浅いこの時季に、明るい低山を歩くと心躍ります。足元にスミレの花が咲いているのを発見。花が、身を寄せ合うように地面を覆って咲く様子は見事です。これはタチツボスミレ。薄紫色で柔らかな印象の花です。丸っこいハート型の葉も愛くるしい。
いっぽう、濃い紫色の花を咲かせるのはスミレ。スミレ科スミレ属のスミレです。葉が細長くて株立し、ひと株に多くの花が咲きます。日当たりのいい場所には、気の早いスミレがあそこに、またこちらにと咲くのが見られます。
スミレの花咲くまわりは、まだまだ緑の草は多くありません。枯れ葉が細かに積もっている状態。すぐそばの林の中では、誰かが乾いた音をさせて歩き回っています。よく見ると、シロハラでした。大型ツグミ類、ムクドリくらいの大きさの、全体に淡い灰色から茶色をした野鳥です。
地面を歩き回りながら、盛んに枯れ葉をクチバシでつついてはかっ飛ばしています。何かおいしいものが見つかったかな。わりと大きな鳥なので、動作の音が意外に大きくて驚きます。黒黒した丸い目が愛らしい。ゆっくりゆっくり歩を進めて、林の奥の方へ姿を消しました。

シロハラは冬鳥なので、もう少し暖かくなったころには北へ帰っていくでしょう。逆に咲き始めたスミレは、さらに花を増やして春の盛りまで咲き続けます。季節の変わり目に交差する、花と鳥です。
啓蟄の節気が終わると早くも春分。もうすぐ春も本番です。それまでに、鳥たちの声はさらににぎやかに、春の花も次々とほころび始めることでしょう。

平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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