こんにちは。暦生活編集部です。
今日は「すずむし」についてのお話です。
「りーん、りーん…」
透き通るほど美しい、繊細な声で鳴くすずむし。
その声を聴くと心がすっと落ち着き、どこか懐かしい気持ちになります。
俳句の世界で「虫」といえば、秋の草むらで鳴く虫たちのこと。夏の暑さも折り返し、吹く風もどこか秋のものに感じられる頃、どこからか穏やかな虫の声が聞こえてきます。
昔から、自然とともに生活してきた日本人にとって、虫の声はとても身近なものでした。秋の夜に、野山に出かけて虫の声を楽しむ「虫聞き」という言葉もあります。実は、このようなならわしは世界的に見ても珍しく、日本人の感性が生み出した誇るべき文化なのだそうです。
鳴く虫の声を聴く文化は、最古の歌集『万葉集』にみられることから、少なくとも奈良時代にさかのぼることができます。遠い昔から受け継がれてきた、虫の声を楽しむならわし。今私たちも同じように楽しんでいることが、少し不思議に思えます。
すずむしは夏から秋にかけて、夜になると美しい声で鳴きます。鳴き声が鈴を振るようなのですずむし(鈴虫)と呼ばれるようになり、古くから「鳴く虫の王」といわれてきました。その音色は風流なものを好む多くの人々に愛されてきました。
すずむしを調べていて面白いと思ったのが、その声は電話では拾えないこと。
これはすずむしの声に限った話ではないのですが、鳴く虫の声は周波数が高く、電話では相手にその鳴き声を聴かせることができないのだそうです。すずむしの美しい声を聴いて心を癒せるのは、その場にいる者の特権なのかもしれません。
秋が近づくと、きっと誰の心にも思い出とともに静かに鳴り響いている虫の声。
学校や仕事の帰り道、イヤホンで音楽を楽しむのもいいのですが、時々は虫の声に耳を傾け、移ろう季節を感じ、自然から聞こえてくる暦を楽しむのも素敵ですね。
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