「きれいな髪」はとても重要な健康ポイントですよね。
中医学で髪は、五臓の腎*に属し、「血(けつ)の余り」によって作られると考えられています。
白髪が増えた、髪が細くなった、抜け毛が多いといったお悩みのご相談は少なくありません。
中医学では、髪は血の余りによって作られると考えるので、月に1度血を失う女性では、髪の変化を顕著に感じる方が多いようです。特に、妊娠・出産・授乳は、血を大量に消耗するので、産後に髪が少なくなった、細くなったと感じる方も多いです。
また、髪は加齢とともに変化する腎によって養われているので、男女とも加齢で髪の弱さを感じる方も多い傾向にあります。
腎は、生命力・生殖力の源です。過労や加齢で「腎」の働きが弱ると、抜け毛や髪のハリやツヤが低下し、白髪が増えて、いわゆる「老化現象」が見られるようになります。高齢でなくとも、過労や睡眠不足、偏食などの問題が多ければ、同じく腎は弱ります。そしてそのとき、髪も同時に弱ります。
*腎:中医学で腎とは、尿を作り出すだけの器官ではなく、成長、発育、生殖を統括している、生命力「腎精(じんせい)」を蓄える“命の袋”。この腎精が不足すると、精力の減退、活力の減退、思考力・記憶力の減退、頻尿、健忘、髪・骨・耳の衰えなどの症状が現れます。腎は加齢にともなってその力が低下します。
腎を養い、血を増やすことが、きれいな髪を維持する鍵になります。
そんな時におすすめなのが、「黒ごま」です。
黒ごまは漢方の生薬にもなる食材で、生薬では「胡麻仁(ごまにん)」といいます。専門書を見てみると、胡麻仁は、体液を補う「補陰薬」に分類され、寒熱の偏りがない平性で、冷え性でもほてりがちでも、どんな方でも安心して食べられます。効能は、補益精血(ほえきせいけつ)、潤燥滑腸(じゅんそうかつちょう)で、血の不足による白髪、ふらつき、目のかすみ、耳鳴り、痺れ、体内の乾燥が原因の便秘に用いられます。
取り方は、炒って食べるか、くるみやはちみつなどと一緒に食べるのが良いとしています。
ポイントは必ず砕くか、切るか、擦るかして使用すること。食べる場合は、全部噛み潰すまで噛むようにしてください。胡麻の殻は堅いので、飲み込んでしまうとそのまま排便されてしまいます。また、潤い補給力を持っているので、便がドロドロしている方は避けましょう。
煎じ薬として使うときは9〜30gが良いとされていますが、食べる時は、大さじ1杯ぐらいが目安でしょうか。砕くかするかして、はちみつと混ぜればちょっとしたデザートになりますし(くるみや松の実、アーモンドを砕いていれると尚良しです)、味噌汁やご飯にそのままふりかけてもいいですね。
また、腎は寒さに弱く、冷えは血のめぐりを悪化させますので、冷えは髪にもよく有りません。冷えは足元からやってきます。下半身の防寒保温に特に気をつけましょう。室内でも靴下を履き、スリッパを利用し、くるぶしが露出する靴下は控えましょう。また、体温より冷たいものはできるだけ控えるようにして、シャワーだけではなく、湯船に浸かりましょう。
腎は黒ごまのように、黒いものを好むとされているので、そのほか、黒砂糖、黒豆、プルーン、黒米、くろきくらげ、牡蠣などもいいですよ。
腎をしっかりサポートしていつまでも若々しく美しい髪を維持しましょう。
櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
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