こんにちは。気象予報士の今井明子です。
雨の季節と聞いて思い浮かぶのは梅雨という人は多いはず。でも、意外に思えるかもしれませんが、夏の終わりから秋にかけても、ぐずついた天気が続く雨の季節なんです。秋の長雨は、秋雨とも呼ばれます。
実は、東日本は初夏よりも秋のほうが雨の季節といえます。降水量の平年値を見ていても、西日本は初夏のほうが秋よりも雨量が多い傾向にあるのに対し、東日本は秋のほうが初夏よりも降水量が多い傾向にあるのです。
この季節、天気図を見ると、まるで梅雨前線のような停滞前線が確認できます。これは秋雨前線と呼ばれています。秋雨前線の北側には冷たい空気でできた高気圧が、南には暖かく湿った空気の太平洋高気圧があります。秋雨前線は太平洋高気圧の勢力が弱まると出現するのです。
秋は台風のシーズンでもあります。秋の天気図には、秋雨前線に台風が接近するようなパターンもたびたび登場します。このような気圧配置になると、前線に台風からの暖かく湿った風が流れ込み、大雨が降ります。台風と秋雨前線が組み合わさったときは災害が発生しやすいので、天気図に登場したら要注意です。
秋雨で大きな被害が出たのが、2015年の関東・東北豪雨です。この年の9月は、台風や前線の影響によって関東地方と東北地方で記録的な大雨となり、多くの地点で最大24時間降水量が観測史上1位の値を更新しました。そして鬼怒川が決壊し、住宅の全壊が81棟、半壊が7045棟、床上浸水が2495棟、床下浸水が13159棟という大きな被害が出ました。
さらに、災害関連死も含めて14名の犠牲者が出るという痛ましい災害となりました。
梅雨よりも秋雨のほうが知名度が低いですし、梅雨と違って秋雨には「秋雨入り」「秋雨明け」という言葉はありません。さらに、秋晴れという言葉もあるため、なんとなく秋は晴れる印象が強く、ついつい秋に行楽の予定を入れてしまいたくなります。しかし、梅雨だけではなく、秋雨のことも頭に入れておいてほしいのです。そうすれば、思いのほかぐずついた天気が続いて外出できずにがっかりすることが減るのではないでしょうか。
今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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