こんにちは。気象予報士の今井明子です。
まだまだ梅雨は明けてない地域がほとんどですが、梅雨が明けたら蒸し暑い晴天の日が増えていきそうです。
夏になるとよく発生するのが「夕立」。
夏の日差しで地面がじりじりと照らされると、地表付近の空気も熱くなります。
暖かい空気は軽いため、ふわふわと浮かんで上空に向かいます。つまり、上昇気流が発生します。そして、上空に移動した空気は冷えて雲になります。この上昇気流がとても強いと、空の高いところまで空気が移動するので、雲の背もとても高くなります。これが雷雲とも呼ばれる積乱雲です。
天気予報で「大気の状態が不安定です」というフレーズをよく聞くと思うのですが、これは「上昇気流によって積乱雲が発生しやすく、夕立になりやすい状態」という意味です。
積乱雲はたくさんの水や氷の粒でできています。これらの雲の粒はまわりの水蒸気を取り込んだり、雲の粒どうしでくっついたりしてだんだん大きくなっていきます。そして雲の粒がある程度大きくなると地面に向かって落ちてきます。これが雨です。積乱雲の中には強い上昇気流があるので、それに打ち勝つくらい重くならないと雨粒は落ちてきません。だから、積乱雲からは強い雨が降るのです。
さて、夕立はあっという間にやってきて、1時間もすればやんでしまいますよね。
これはなぜなのでしょうか。
実は、積乱雲は強い上昇気流によって発生するのですが、雨が降るようになると、雨粒に引きずられて積乱雲内で下降気流が発生し、そのうち上昇気流が打ち消されて雲が消えてしまうからです。
しかし、そう書くと、「夕立のような大雨が長く続くこともあるよ」とツッコミを入れたくなる人もいるかもしれません。
特に梅雨末期は、雷を伴うような強い雨が長時間続くことが多いです。これは集中豪雨と呼ばれており、やはり積乱雲によるものです。積乱雲が同じ場所でできては消えることを繰り返し、世代交代しているので、結果としてその場所に積乱雲が長く存在することになって強い雨が続くのです。
最近では、夕立は「ゲリラ豪雨」と呼ばれることのほうが多くなってきました。
確かに、夕立はいきなり激しい雨が降るのでびっくりするものです。実は気象現象というものは大きいものは寿命が長く、小さいものは寿命が短い傾向にあります。たとえば直径2000kmの低気圧はできてから消えるまで約1週間程度かかるのですが、積乱雲は直径十数km程度と低気圧に比べると小さく、寿命も1時間程度と短くなります。
雨の降っている範囲が狭く、寿命の短い現象は予報が難しいので、いきなり襲ってくる「ゲリラ」のようだというわけですね。
こういった急な大雨は河川の水位が急に上昇したり、道路が冠水したりと、さまざまな災害をもたらします。ですから、気象庁をはじめとする研究機関では、このような範囲の狭い大雨もあらかじめ予報できるように、予報技術の向上を目指して頑張っています。
もし、今よりももっと事前に予報できるようになれば、未来ではゲリラ豪雨という言葉は死語になるのかもしれません。
今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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