こんにちは。気象予報士の今井明子です。
五月雨と書いて、何と読むか。答えは「さみだれ」です。昔から漢字テストで難読熟語としてよく出題される言葉なのではないでしょうか。
五月雨と書くからには、5月に降る雨かと思うかもしれませんが、この5月とは旧暦のこと。すなわち、五月雨は現代で言えば6月ごろに降る雨のことを指し、梅雨の雨という意味です。
五月晴れも、本来は5月ごろのすがすがしい陽気ではなく、梅雨の中休みを指す言葉でした。五月雨もやはり梅雨の言葉なのです。
五月雨と聞いて思い出すのは、松尾芭蕉のあの有名な俳句ではないでしょうか。
「五月雨を 集めて早し 最上川」
実は私もまさに、これを目にしたことがあります。
7月中旬の連休に、東北地方へ旅したときのことです。関東に住んでいると、この時期はもう梅雨がほとんど開けそうな時期だったので旅行することにしたのですが、東北地方はまさに梅雨末期の大雨が降り続く天気でした。
旅行中、最上川のそばにある道の駅で休憩すると、ものすごい勢いの濁流が迫り、その迫力に息をのみました。ああ、松尾芭蕉が読んだ風景はこういうものだったのかと実感したものです。
令和2年7月豪雨と命名された全国各地の豪雨でも、最上川が氾濫しました。あれだけの勢いならそれもありえるよなあ…と納得です。
さて、話は変わりますが、仕事でよく「五月雨式」という言葉を耳にしませんか?
私はしょっちゅう使っています。なにせ、まとまったページの原稿を依頼されたとき、「五月雨式でいいので、できたものから少しずつください」といわれることが多いのです。依頼してから納期をなるべく短く設定して次の工程に進めたい依頼者側の都合と、そうはいってもその納期通りにはできないこちらの都合の妥協点として、「五月雨式」が使われるわけですね。
なぜ、こういう「少しずつ提出していく方式」が「五月雨式」なのかというと、梅雨のように雨がだらだらと長く続くからだそうです。なるほど! そういった意味があったのかと目から鱗です。
だらだらと雨が降り続くと、気がめいってしまうもの。だからこそ、たまに「五月晴れ」になるとテンションが上がります。今年の梅雨は空梅雨か、それとも長梅雨か。いったいどうなるのでしょうか。
今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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