こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は日本の食卓に欠かせない「納豆」についてのお話です。
みなさん納豆はお好きですか?
一時期、父が納豆作りにハマっていたことがある。納豆は藁と大豆があれば出来るという。父はA4サイズくらいの紙の菓子箱の中に藁を敷き、その中で大豆を発酵させていた。2〜3日温めると納豆が出来上がる。自慢気な父が持つ箱の中身を覗き込むと、大豆が糸を引き、納豆の色になっていた。
私は箱から納豆を少しだけ取って、ご飯にかけて食べてみた。
父は私の反応を楽しそうにうかがっていたが、当時私はそこまで納豆が好きではなかった。
市販の納豆も1パックは食べきれず、弟のぶんを少し分けてもらえれば満足だったし、食べるなら小粒の納豆の方が好きだった。お手製の納豆は粒が大きい。自家製となると、匂いも少し独特な感じがする。
父には「美味しい〜」と答えて食べていたが、少ししか食べていなかったので、苦手だったのがバレていたかもしれない。
関西に来て、自炊をするようになってから、スーパーの納豆の種類の多さに驚いた。じっくり見てみると、とにかくバリエーションが豊かだ。小粒、引き割り、大粒と大豆の大きさは勿論、タレも紫蘇のり、おろしだれ、あご出汁など様々な味がある。さらに、匂いの少ない納豆まである。
関西人は納豆はあまり好んで食べないと聞いたこともあったが、これだけあれば、自分好みの納豆が見つかるに違いないと思った。
また、納豆を「ご飯のおとも」以外の選択肢として見るようになってから、徐々に好きになっていった。おかずの一品として捉え、他の料理を量を減らすようにしたのだ。また、京都で好きな納豆屋さんに出会ってからは、大粒を選ぶことが多い。豆の味がしっかりしていて美味しく、食べ応えがある。
子どもの頃に小粒の方が好きだったのは、ご飯と合わせて食べやすかったからなのだろう。
ちなみに、引き割り納豆などは、和え物やソースとしてなど、使い分けてみるといいそうだ。
納豆は、食べ分けてみると楽しい。
年中手に入るとつい忘れてしまいがちだが、加工品である納豆にも旬がある。
納豆の旬は1〜2月ごろ。11〜12月に収穫された大豆を貯蔵して年を越すと、新豆ならではのふっくらとした感じはそのままに、程よく水分が抜ける。大豆の旨みが凝縮された大豆で作る納豆は、豆そのものの甘みが感じられるそうだ。
納豆の日は7月10日だが、これは元々関西地方限定で販売促進のために作られた記念日だったようで旬とは関係ないらしい。
今は、自分が好きな納豆に出合えているのだが、子どもの頃の記憶のためか、私はつい定番の買い物リストの中に納豆を入れるのを忘れてしまいがちだ。豆類をお手軽に食べられる食品でもあるので、買わない手はない。
私は、つい手が伸びにくい食材などは、旬や行事食などのイベントに絡めて食べることが多い。
これからは納豆の旬が始まり、そして夏には記念日にもある。
「今は納豆の旬らしいよ!」とか「今日って納豆の日なんだって!」などと、その食材のことを思いながら、食べるのは楽しい。何かとかこつけて食べるのも、そんなに悪くないと思うのだ。
庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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