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グラタン

旬のもの 2023.02.25

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は寒い日に食べたくなる「グラタン」についてのお話です。

多くの人が好物であるだろう「グラタン」。オーブンなどを使用して、表面を焦がすように仕上げた料理のことを指す。失敗した焼き料理のおこげが美味しかったという偶然から、グラタンは生まれたそうだ。焼いて程よい水分が抜けることで、おこげは旨みが増す。この香ばしい香りがたまらない。

グラタンの名前の由来は、フランス語の「掻き取る、ひっかく」という動詞「grater」からきているという。料理は、食べやすさも美味しさに直結してくると思うのだが、ことグラタンにおいては、皿にこびりついたチーズのおこげをカリカリと引っ掻いている時こそ、「あぁ、グラタンを食べているなぁ」と染みる時間でもある気がするのだ。

一人暮らしをして初めての冬に、温かいグラタンが食べたくなり、作ってみようと思い立ったことがある。
「今ならブロッコリーが美味しい時期。海老や玉ねぎも必須!チーズも好きなだけかけて…。自分の好きなものが入ったグラタンが作れるなんて、一人暮らし最高!」とウキウキしながらスーパーで具材を揃えた後で気がついた。「グラタン皿を持っていない!」
家にある皿で作れる気もするのだが、どれが耐熱なのかが良く分からない。何より、出来ればグラタンはグラタン皿で、ほっこり一人ご飯を堪能したい。

幸い近所に100円均一のお店がある。私は想像以上に重くなった買い物袋を抱えてお店に入った。
食器コーナーを探しながら、「実家のグラタン皿はどんなのだったっけ?」と考える。確か真っ白で優しいカーブをえがいたラウンド型。両端に取手のついた底の低いものだった。これが台所に用意されていると、「今日はグラタンなんだな」と分かって嬉しかった。しかし、もう少し食べたい!と思うようなサイズだった気がする。
「お腹ペコペコだし、たくさん入る大きさがいいな…。大は小を兼ねるって言うしな」などと考えながら、実家のよりも大きくて底の深い耐熱皿を選んで買って帰ることにした。

スーパーで買ってきた沢山の具材をワンルームの小さな台所でどんどん切っていく。お腹が空いていると、たくさん食べたくて、つい調子に乗って多めに切ってしまいがちだ。
母が持たせてくれた大きめの鍋に、切った具材を硬いものから順に入れて炒める。同じ鍋に牛乳を入れて小麦粉で固める。買ったばかりのグラタン皿に流し入れて、トースターで焼いたら出来上がり。

熱々の取手をミトンで持ち、リビングの机へ今日の主役を運び、座った。程よく焦げたチーズが、余熱でチリチリと鳴っている。
スプーンですくうと、とろっとソースが落ちる。思っていたよりも少しゆるい。グラタンというより、シチューを固めたかのようだ。ダマも出来てしまった。まぁ、初めてにしては上出来なのではないだろうか。
ごろごろ入った具材をハフハフ食べる。冷えた体がじんわりと暖まり、1人自然に笑顔になる。

「次はベシャメルソースは別の鍋で作った方が良いかな」などと考えながら食べるうち、徐々にお腹も満たされ、とうとうスプーンを持つ手が止まってしまった。皿にはまだグラタンが残っている。最大の楽しみにとっておいた、皿の端のおこげまで辿り着けていない。おこげを食べるところまでがグラタンなのに!
食べ切れると思っていたが、作りすぎてしまったようだ。

実家のグラタン皿のように、こびりついたおこげをスプーンで引っ掻きながら「もう少し食べたかったなぁ〜」なんて思いながら、食べるくらいがいいのだろう。
グラタン皿は少し小さいくらいの方が、丁度いい。と学んだ、一人暮らし2年目の春であった。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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