こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。
日本三景といえば、「宮城県の松島・京都府の天橋立・広島県の宮島」ですね。では、日本三鳴鳥(にほんさんめいちょう)といえば何でしょう。答えは「ウグイス・コマドリ・オオルリ」。どれもが日本に生息する美しい声で囀る小鳥たちで、古くからこの3種がそう呼ばれています。
でも、日本には、キビタキとかクロツグミとか他にも美しい声で囀る鳥がまだまだいるのですが、どうしてこの3種が選ばれたのか、その経緯はよくわからないんだそうです。ただ、この三鳴鳥、昔は飼育することができ、飼い鳥としても人気があったので、その影響ではないかという話があります。今回はその三鳴鳥のひとつであるオオルリのお話です。
オオルリは、スズメくらいの大きさの小鳥で、4月ごろに越冬地の東南アジアから日本へ渡ってきて子育てをする夏鳥です。オスは、三鳴鳥に選ばれるほどの美しい声で鳴き、体の上面は輝くような瑠璃色をしています。美声と美貌を併せ持ったこの鳥には、「天は二物を与えず」なんていう言葉はないんでしょうね。
一方、メスは地味な淡い褐色の小鳥で、オスとはあまりにも違います。これは仕事の分担が影響していて、メスは巣に座って卵を温めないとならないので、捕食者に見つからないように地味な色をしているのです。オスは、卵を温めないのでハデな色でも問題ないのでしょう。
そんな青く美しいオオルリ。バードウォッチングが趣味でない方でも、ひと目その姿を見てみたいと思うのではないでしょうか。では、その出会い方のコツをお教えしましょう。まずはどんなところにいるのか。オオルリが日本に渡来する地域は、北海道から九州までの結構広い範囲です。生息環境は広葉樹が茂る低い山の森で、特に渓流沿いの森で多く見られます。
時期は、5月から6月にかけてがベスト。したがって、今だとちょっとシーズンの終わりに近いかも。深い渓谷を望む林道を歩いていると、谷間から「ヒーリーリィ、ピーリリィ、ジジ」とゆっくりとしたテンポの涼しげなオオルリの声が聞こえてきますので、双眼鏡で声がするあたりをじっくりと探します。すると枝先にとまった青い色が目にとまることでしょう。
ただ、この美しい青を堪能するには、ちょっと条件が必要です。それは順光でやや上か横から見ること。光線の具合が悪いと黒っぽく見えてしまうことがあるのです。オオルリの青い羽の色は、構造色といって、羽毛にある微細構造に当たった光が反射することによって発色しているため、見る角度によって青に輝いて見えたり、黒っぽく見えたりします。ですから、写真でこの青をきれいに写すのは意外と難しく、良い条件でないとオオルリの素晴らしさはなかなか表現できないと言われています。
ところでオオルリは、どうして渓流の森を好むのでしょうか。それは食べものと関係があります。オオルリの主な食べものは飛んでいる昆虫です。渓流には幼虫時代を水中で過ごす昆虫がたくさんいて、それが大量に羽化して飛び回ります。そんな食べものの昆虫がいるから、オオルリは渓谷の森が好きなんですね。また、水生昆虫以外にも、谷を吹き上がる風に飛ばされた昆虫もたくさんいるので、渓谷は虫を食べる鳥にとって効率よく食べものが得られるレストランのようなところでもあります。
オオルリは、見通しのよい枝先で昆虫を待ち伏せし、射的距離内に飛んできたら、パッと飛び立って空中で捕らえ、また元の枝先に戻る。こういう行動をフライングキャッチと呼び、オオルリの得意技の一つです。幸運にも、こんな行動をする鳥が見つけられれば、何回もフライングキャッチを繰り返すので、じっくりと観察できるでしょう。
前述したように、今の時期は、渓谷へ行かなければオオルリが見られませんが、春と秋の渡りの時期には、思いがけない場所で旅の途中の個体に出会うことがあります。なかでも春の渡りの最盛期であるゴールデンウィークの頃は、そのチャンスです。私は、東京の渋谷駅前にある公園でオオルリのオスに出会ったことがあるのですが、そんな偶然の出会いは本当に嬉しさ百倍。まさに幸せの青い鳥に出会った感じで、何十年も経った今でもその光景ははっきりと目に焼き付いています。来年のゴールデンウィークはかなり先ですが今から楽しみです。
柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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