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夏台風

旬のもの 2023.08.22

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こんにちは。気象予報士の今井明子です。
夏休みも後半に入りました。これからの季節、日本にたびたびやってくるのが台風です。
台風といえば、秋のイメージが強いのですが、夏にもたくさん発生しています。

気象庁の統計では、台風の発生数は8月が5.7個、9月が5.0個、10月が3.4個です。そして台風の接近数は8月が3.3個、9月が3.3個、10月が1.7個。上陸数は8月が0.9個、9月が1.0個、10月が0.3個です。上陸数こそ8月は9月よりやや少ないものの、接近数は8月と9月は同じで、発生数に至っては8月のほうが多いのです。つまり、夏も台風シーズンであることがよくわかります。

それなのに、台風といえば秋にやってくる印象が強いのはなぜなのでしょうか。それは夏に日本列島を覆う太平洋高気圧のせいです。台風は、赤道近くの熱帯の海で発生したあと、赤道付近の上空に吹く貿易風とよばれる東風に流されて、太平洋高気圧の縁を通りながら北西方向に移動します。

そして、中緯度では上空には偏西風とよばれる西風が吹いているので、中緯度にまで北上した台風は偏西風に乗り、進行方向を北東に変えてスピードアップします。9月ごろは台風を通せんぼしていた太平洋高気圧の勢力が衰えてくるので、ちょうど台風が日本列島付近を通れるようになり、日本列島に接近・上陸しやすくなるのです。

しかし、8月は日本列島が太平洋高気圧に覆われているので、台風は日本列島には近寄れませんし、うまく偏西風の流れに乗れません。それで、移動がゆっくりだったり同じような場所で足踏みしていているかのようにだらだらと居座ったりします。ときには、南から次の台風も北上してきて、台風が渋滞することもあります。すると、接近した台風同士が影響しあって、予測不能な複雑な動きをすることもあるのです。

台風のエネルギーは暖かい海から供給される水蒸気です。秋の台風が北のほうに行くとそのうち勢力を弱めて消えてしまうのは、海面水温が冷たくなって十分なエネルギーが得られないからですが、夏の台風はなかなか北上しないため、暖かい海の上で水蒸気がずっと供給されて、なかなか勢力が弱まりません。ですから、台風が長生きして雨や風の影響が長期間に及びやすいのです。

せっかく夏休みに旅行の予定を入れたのに、台風のせいで飛行機や船が欠航して旅行を中止しなければいけないのは本当にがっかりしますよね。夏休みの予定を立て、交通手段や宿を押さえるときには台風が発生するかどうかはまだわかりません。私自身も夏のレジャーは祈るような気持ちで予約をしていますし、いざ台風が発生してしまったら、当日を迎えるまで、天気予報とにらめっこです。

しかも、台風というのはやっかいで、台風から遠く離れた場所でも「うねり」と呼ばれる高い波が到達します。たとえば台風が沖縄付近にあったとすると、関東地方は青天であっても、波が高くなることは決して珍しくはないのです。この「うねり」が意外な落とし穴なので、どこかで台風が発生しているときに海水浴やマリンスポーツなどの予定を入れているときは、波の予報をしっかりと見て、場合によっては予定を変更することも頭に入れておくことをおすすめします。

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今井明子

サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。

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