中医学で秋とは、立秋(8月8日ごろ)から霜降(10月23日ごろ)までの約3か月間を指します。約2000年前に書かれた『黄帝内経』によれば、秋は容平(ようへい)と呼ばれ、万物が成熟し、形が安定する時期です。厳しい冬にむけて、春夏と外に向かって放出されていたエネルギーを内向きにして蓄える季節なので、運動を控え、気持ちを広げ、心静かに過ごしましょう。

中医学が指す五臓の肺は、悲しみや憂いと関係性が深く、鼻、大腸、皮膚と深く関わる臓器です。肺は乾燥と冷えによりその機能を低下させるので、秋の天候は乾燥しやすく、肺にとって厳しい季節となります。この時期に増える、乾燥による咳、髪の乾燥や皮膚の乾燥や肌荒れ、喘息、胸痛や鼻づまり、咽頭痛、便秘などの症状に加え、悲しみの感情などは、この肺の弱りと関連しているかもしれません。

中医学では前の季節の過ごし方が体に大きな影響を与えると考えられています。春の不摂生が夏の冷え性を引き起こし、夏の乱れた生活が秋の咳や喉の不調を招きます。秋の養生を怠ると、冬に下痢しやすくなります。これから来る冬、そしてその次の春を元気に過ごすためにも、いまいちど秋の過ごし方のポイントをおさらいしておきましょう。
養生的秋の過ごし方
早寝早起き
生命エネルギーである“気”は朝に作られると考えられています。秋は、この“気”の流れが身体の外から内側に変わる季節です。早起きをし、“気”を体内に摂り入れましょう。特に、深呼吸をすると、気がたくさん摂り入れられるだけでなく、その気を体内に巡らせることも出来ます。

早起きには、以下のメリットがあります。
・朝日を浴びることで、体内時計が整い、自律神経のバランスが保たれる。
・身体の各機能が活発になり、代謝がアップする。
・精神状態が安定し、ストレスが軽減される。
・食欲が安定する。
気候の変化に注意する
秋は気候の変化が大きい季節です。ただし、早い時期から暖房器具をつかったり極端な厚着をしたりするのではなく、序盤は寒さに慣れていくよう薄着を続けましょう。早めに厚着をしたり、暖めたりしてしまうと、寒さへの抵抗力が低下し、冬に体調を崩しやすくなります。
また、夏の間は大量に汗をかきますから、秋の体は乾燥した状態です。中医学では、このような状態で冷たく乾燥した外気にさらされると、冷えや痛み、咽頭痛や咳、便秘、肌の乾燥やかゆみ、イライラなどが出やすくなると考えます。食事や水分で、適度な潤い補給を心がけましょう。

気温の変化による体調不良を防ぐためには、以下のことに気をつけましょう。
・体調に合わせて服装を調節する。羽織るものをもって出かけよう。
・温かい飲み物で、少量ずつ水分補給をする。
・飲むだけでなく、潤いを食べて補う。
・10月の第一週ぐらいまでは厚着しすぎない、暖房を使い過ぎない。
肺の働きを助ける
中医学の五行説の考えでは、秋に関係する五臓は“肺”です。肺の働きには、“呼吸運動を主る”、“全身の気の生成と調節を行う”、“気を身体の内部から体表へ発散させる”、“体液バランスを調整する”などがあります。肺は、元気、活力、声の力、全身のうるおい、そして病気への抵抗力や防御力などを管轄しています。
粘膜や肌を管轄しているように、乾燥は肺の働きを弱めると考えられています。気温が下がり始め、湿度が低くなり、空気が乾燥してくる秋は、肺の働きが弱くなる時期でもあるため、気力や体力を維持するためにも、肺の働きを助ける養生をしなければいけません。

乾燥した空気から肺を守るため、鼻やのどの乾燥には加湿器やマスクの着用、皮膚の乾燥には保湿クリームなどを利用しましょう。
こまめに水分を補給することは、のどの乾燥予防にもなります。ただし水分をとるだけだと、今度は湿気が苦手な脾(胃腸系)を弱らせてしまうので、水分はとりすぎに注意し、その分、野菜や果物など食べ物で補うよう心がけましょう。野菜たっぷりの味噌汁や野菜スープ、湯豆腐、おかゆなどもおすすめです。折しも乾燥の秋には、梨や柿、りんご、松の実といった潤いを補う食材たちが旬を迎えます。冷やしすぎは避けて、しっかり食べましょう。また、飴をなめたり、ガムを噛んだりすることで口の中に唾液が出ることにより、のどの乾燥予防にもなります。

肺の働きを助ける食材を摂る
“気”を養い、体を潤す食材を積極的に摂りましょう。1日3食の食事の中で、養生を行うことで、肺の働きを助けましょう。

肺の働きを助ける食材としては、以下のものが挙げられます。
・梨
・チーズ、ヨーグルト
・アーモンド
・銀杏
・松の実
・くわい
・ゆりね
・柿
・干し柿
・卵白
これらの食材を積極的に摂り、秋を快適に過ごしましょう。

秋は、夏の疲れをとるとともに、肺の働きを助けることで、冬に向けて健康な体づくりを行うことが大切です。秋の過ごし方を心掛けることで、健康を維持し、冬の体調不良を予防できます。早寝早起き、気温の変化に注意、肺の働きを助ける食材を摂る、というポイントを押さえて、秋を過ごしましょう。

櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
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