こんにちは。料理人の川口屋薫です。
11月です。木枯らしが吹き、落ち葉の絨毯が広がると同時に幹や枝が露わになる落葉樹は、どこか寂しさを感じさせます。
今日のお話は、落葉樹のカキノキ「干し柿」です。
干し柿は渋柿をもとにつくられますが、日本の歴史に干し柿が登場したのは平安時代、祭礼用のお菓子として出たのがはじまりでした。
やがて鎌倉時代になると、甘柿が主流となりますが、それまでの日本には渋柿しか無く、渋すぎてそのまま食べることはできないので、天日干しで渋みを抜く「干し柿」が嗜好品や保存食として親しまれてきました。
私も小さい頃に渋柿を食べてみたことがあるのですが、舌がザラザラになって、渋い味にとても驚きました。なぜ渋いのかというと、タンニンという成分があるためです。水溶性のタンニンは、口の中で溶けることで渋みを感じさせますが、乾燥させるとタンニンが不溶性へ、つまり水に溶けなくなります。これを「渋抜き」と呼びますが、渋抜きすることで渋柿の甘さだけを感じられるようになるのです。また意外なことに、渋柿は甘柿より糖度が高いため、干し柿に向いていると言われています。
干し柿の作り方は、約1ヶ月半から2ヶ月かけて、天日干しにします。
皮を剥き、橙色の実を一つずつ藁や紐などで結んでいき、家の1階と2階の軒下に吊るします。
里山の秋の風景というのでしょうか、たくさん吊るされた干し柿は、照柿色(暦生活にっぽんのいろより)で、元気づけてくれるような明るさと、艶やかな鮮やかな色に魅せられます。
干し柿の種類は、主に「あんぽ柿」と「ころ柿」があります。元の実の重さの約40〜50%まで乾燥させたものを「あんぽ柿」、約25〜35%まで乾燥させたものを「ころ柿」といい、乾燥状態の違いでわけられています。
あんぽ柿の名前の由来は、1760年頃に福島県伊達市あたりで、「甘干し柿(あまぼしかき)」と読んでいたものが訛ったとされています。あんぽ柿は、半生タイプ。半熟卵のように中はトロリとしています。
一方ころ柿は、おひさまの光を柿にまんべんなくあてるために、ころころと転がして乾燥させたことからついたとされ、漢字は枯露柿と書きます。
ころ柿は、しっかりとした硬さが特徴です。さらに干していくことで、水分が少なくなり、保存性が高くなっています。ころ柿の表面についている粉雪のような白い粉は、実から滲み出た糖分(オリゴ糖)が乾燥したものです。口に入れると凝縮された甘みが少しずつ溶けていき、より上品な味わいになるそうです。
干し柿は、お正月の鏡餅の飾りにも使われ、今では和のドライフルーツとして人気があるそうです。昔からの日本の保存食、これからも守っていきたいですね。
今回のレシピは、あんぽ柿を使います。
パンにつけたり、ワインのおつまみに、よかったら作ってみてください!
あんぽ柿とマスカルポーネチーズクリームの2種
材料(2人前)
•あんぽ柿 1個 •マスカルポーネチーズ 100g •クルミ 適量 •干ぶどう 適量 •蜂蜜 小さじ1
作り方
①あんぽ柿を薄めに切ります。 ②マスカルポーネチーズに蜂蜜大さじ1を加えてスプーンで混ぜ合わせます。 ③別の器を用意して、②を半分ずつに分けます。 ①と荒めに砕いたクルミと干しぶどうを加えて混ぜ合わせます。 もう一つは、刻んだあんぽ柿½個分を混ぜ合わせます。 ④お皿に③を盛り、上から蜂蜜を少し垂らしたら完成です。 ゴルゴンゾーラチーズやクリームチーズ、また、ナッツやドライフルーツも、お好みの種類で作ってください。
川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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