ようやく秋も深まり、朝晩冷えるようになってきました。温かい食べ物が恋しくなる季節ですね。今回ご紹介したいのは、愛媛県で愛される秋の風物詩「いもたき」です。大洲(おおず)市を流れる肱川(ひじかわ)の河原では、秋になると大勢の人が集まって、まるでバーベキューを楽しむように、いもたきの鍋を囲むのだそう。

愛媛県大洲市が発祥とされる「いもたき」は、秋に収穫される里芋をふんだんに使い、鶏肉や椎茸、こんにゃくなどの具材と煮込んだ鍋料理です。
そもそもは、今から350年以上前の江戸時代、大洲で春と秋の2回実施された「お籠もり」という行事で作られていた鍋料理に由来するとされます。お籠もりは、地域の住民が集まる寄り合いのような催しで、その席で鍋を囲みながら、いろいろな決め事を話し合ったそうです。最初は、農家が里芋を持ち寄り、肱川の鮎の出汁で煮ていたのが始まりだったのではと言われています。秋には、涼しい河原でお月見を兼ねて、親睦を図っていたのでしょうね。
そんな伝統行事を観光客にも楽しんでもらいたいと、市が観光行事として取り組み始めたのが1966年(昭和41年)。以来、地元の料理店だけでなく、河原にセッティングされたいもたき会場で、観光客も手ぶらでいもたきを楽しめるようになりました。

大洲のいもたきに欠かせない材料は、地域の特産品でもある「夏芋」という里芋。煮込んでも煮崩れせず、もっちゃりとした粘り気のある食感が特徴です。地元の方は「いもたきには夏芋がないと始まらない」と口を揃えるほど。

鶏ガラのうま味とほんのり甘い南予ならではの醤油がベースで、しみじみと懐かしい味わいのいもたき。今では、県内で広く食べられ、家庭料理としてすっかり浸透しています。
多くのスーパーでは、秋になるといもたきコーナーが作られ、食材や手軽に作れる出汁パックが一緒に売られています。基本的な材料に加えて、うずらの卵や白玉団子を入れるなど、家庭ごとにさまざまにアレンジされているのだとか。
今がおいしい旬の里芋、今晩の食卓にいかがでしょう。
取材協力:大洲市観光協会、いもたき登録店「よねざわ」
写真提供:清絢

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
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