こんにちは。気象予報士の今井明子です。
いよいよクリスマス。例年この時期は、たびたび日本列島に強い寒気が流れ込みます。クリスマス時期にやってくる寒波ということで「クリスマス寒波」と呼ばれることもあります。そして年末にこのような寒波がやってくる場合は「年末寒波」と呼ばれることもあります。
さて、「寒波」とは何でしょうか。気象庁のホームページには、「主として冬期に、広い地域に2~3日、またはそれ以上にわたって顕著な気温の低下をもたらすような寒気が到来すること」とあります。
この寒気がやってくる場所は、高緯度の場所、すなわち北極に近い場所です。北半球では北極付近にたまった寒気が南に漏れ出してくると寒波襲来となるわけです。では、どんなときに寒気が南に漏れ出すかというと、中緯度付近の上空を吹く偏西風が蛇行するときです。偏西風は蛇行を繰り返しながら西から東へと風が吹いているのですが、その蛇行の幅が大きくなり、蛇行の向きが北から南になると、高緯度の寒気が中緯度に運ばれてきます。これが寒波の正体なのです。
さて、そもそも、北極や南極がなぜ寒く、赤道が暑いのかを考えてみたことはありますか? 実は、太陽の高度は1年を通じて赤道付近では高く、極地では低い傾向にあります。太陽は真上から照らすほど、地面が受け取れる面積当たりのエネルギーの量が多くなります。これは暗い部屋で懐中電灯を真上から照らすと小さな明るい円ができ、斜めから照らすと暗い楕円ができることをイメージすると、わかりやすいのではないでしょうか。
そんなわけで、赤道付近は太陽から得られるエネルギー量が多いため暑くなり、極地はエネルギー量が少ないので寒くなります。そのままだと赤道と極地で得られるエネルギー量に差がつきすぎて、年々気温の格差が広がっていくはずなのですが、大気や海がぐるぐると循環して熱をまんべんなく運ぶので、赤道と極地との気温の格差が広がりすぎないようになっています。この大気の循環のひとつが偏西風であり、偏西風の蛇行によって極地の寒気が中緯度に運ばれることで、地球上の気温の格差が少なくなっているのです。
そう考えると、寒波も地球全体で考えれば大切な営みのひとつなわけですが、それを頭でわかっていたとしても、やっぱり寒いのはつらいですよね。寒波が襲来する日は、家でぬくぬくと過ごしたくなるのは私だけではないはずです。
今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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