こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「豚汁」についてのお話です。
好きな食べもののひとつに、豚汁がある。定食屋やパーキングエリアの食堂などで豚汁を見つけると、つい追加変更してでも頼んでしまう。冬のスキー場や、野外イベントなどで食べる豚汁は格別だ。「寒い寒い」と言いながら家族や友人とアツアツの豚汁をすすり、身も心も温まったのを覚えている。

豚汁は、豚肉と野菜を煮込んで味噌で調味した味噌汁のひとつ。豚汁の歴史はあまり古くなく、天武天皇が最初の「肉食禁止令」を出してから、およそ1200年にわたり日本では牛や豚などの肉を食べることは御法度だったため、明治以降から食べ始められたと言われているそうだ。
調べてみるとルーツは諸説ある。けんちん汁に肉を入れたという説、ぼたん鍋を参考にしたという説、旧日本海軍においてカレー粉の代わりに味噌を入れて作ったことから始まったという説、北海道の開拓を行った屯田兵が食べた「屯田兵の汁」を「屯汁」と呼ぶようになったという説。薩摩汁の豚を使うものが独立したという説などがある。

豚汁の具材もさまざま。地域や家庭によっても、結構特色があるのではないだろうか。
私は豚汁を作るなら、大根、人参、ごぼうは必ず入っていて欲しい。この3つが実家の畑から届き始めると「豚汁の季節が来たな」と急に作りたくなる。冬の根菜をベースに、あとは白菜にお揚げとこんにゃく、しめじとネギも足して食感のバリエーションを広げて王道に行くのがマイルール。
もちろん豚肉を入れ忘れてはならない!豚肉が入るだけで「汁物」がたちまち満足感のある「おかず」にも変わりうるなんて、なんとありがたいことだろうか。

豚汁における最も重要な要素は、味噌で味付けをするところにあると思う。
味噌と豚肉の相性は抜群。味噌は、肉の臭みを取ったり柔らかくしたりする効果があるだけでなく、豚肉の旨みを引き締め、味噌の風味と相まって、味に奥行きをもたせる。また豚肉は、味噌のストレートな塩味や濃さをまろやかにしてくれる。お互いに影響しあうことで、何度でもおかわりしたくなるような美味しい豚汁が出来上がる。
アツアツの豚汁をすすれば、野菜たちの優しい味と、豚肉と味噌が織りなす深い味わいが口の中に広がる。食材のいろんな食感や歯応えが楽しい。豚肉の脂が汁の表面を覆っているため冷めにくく、体の奥からぽかぽかしてきて、寒さで縮まっていた体がゆるむ。
ついたくさん作ってしまっても大丈夫。「冷蔵庫に豚汁がある」と思えると、翌日の食事のメニューを考えるのも楽だ。寒い日にキッチンに立つハードルも下がり、精神的にも嬉しい。

寒い日こそ、豚汁。
美味しい冬野菜がふんだんに食べられて、豚肉や味噌で栄養バランスまで整えられた豚汁は、私の体と心をホッとさせてくれる存在なのだ。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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