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なめこ汁

旬のもの 2023.10.11

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「なめこ汁」についてのお話です。

味噌汁や和え物で親しまれる「なめこ」。独特のぬめりや、つるんとした食感と歯応えが美味しい。きのこ類は苦手だが、なめこは食べられるという人もいるのではないだろうか。

あの独特のぬめりは、タンパク質の吸収を助けたり胃壁を守ってくれたりする働きがある。他にも腎臓や肝臓の機能強化にも良い。ぬめりをとってしまうと、効果が無くなってしまうそうだ。これを逃がさないように料理をするのがミソとなる。汁ごと食べられる「汁物」や「和え物」が最も適しているという。

なめこ汁といえば、赤だしのなめこ汁を思い浮かべる人も多いと思う。フリーズドライのお味噌汁などでも、なめこの味噌汁は赤味噌味のことも多い。また、会席料理などの締めのごはんの汁物として、赤だしになめこが入っているのを見かけることがある。

外食では食べるが、私は赤だしの味噌汁を作ったことがない。せっかくなので、この機会になめこの赤だしに挑戦してみることにした。

今回の具材はなめこと、王道の豆腐とネギ。
スーパーに行くと「ひらきなめこ」というものを見つけた。調べてみると、なめこが丸い頭をしているのは、傘が開く前の30~40日ほどで収穫しているからだそうだ。ひらきなめこは、傘が開くまで70日ほどじっくりと熟成された、味の濃いなめこだ。ぬめりは少ないが、シャキシャキとした歯ざわりが楽しめるという。

赤だしの味噌汁は、一般的な味噌汁とは別ものだと思ったほうがいいらしい。赤だしは「味噌」ではなく「出汁」が主役だという。大切なのはしっかりと出汁を取り、赤味噌は脇役として控えめに入れること。そして隠し味程度にみりんを入れるのがポイントだそうだ。赤味噌初心者にもオススメだという、米味噌と豆味噌を調合した赤だし味噌を購入してみた。

それぞれの材料を切ってバットに用意していく。他のきのこ類は洗ってはダメだと言われるが、なめこは流通の間に酸味が出ることがあったり、おが屑などの汚れが着いていたりすることがあるため、さっと洗うと良い。ザルに入れて、持ち味のぬめりを取り過ぎないように流水で優しく洗う。ツルツルと手からなめこが滑り落ちる。ひらきなめこでも、しっかりぬめりがある。

写真提供:庄本彩美

お出汁を温めたら、豆腐となめこを静かに鍋へ。様子をうかがって火を止め、赤だし味噌を溶く。初めてみる真っ黒な味噌にどきどきしつつ、入れ過ぎないように少しずつ溶かして味見をする。そして隠し味のみりんを少し。確かにいつもの味噌より少なめの量で味が決まった。ネギを散らして完成だ。

写真提供:庄本彩美

白ごはんと漬物を用意して、出来上がった赤だしをいただく。豆味噌の濃厚なコクで白ごはんが進む割に、酸味のおかげでさっぱり感があり、全体的に重くない。
すすると、なめこがつるつるっと口に入ってきて食感も心地よい。この喉越しなら、お腹がいっぱいでも食べやすく、会席料理のような締めの汁物の具材としても打ってつけだ。

秋は美味しいものがありすぎて、つい食べすぎてしまう日々が続く。そんな時にもなめこは食べやすく、疲れ気味の体にも丁度いいかもしれない。
自分で作って食べてみて、初めてなめこと赤だしの相性の良さを実感したのだった。

今や年中出回っているなめこだが、秋が深まってくるこれからが旬となる。原木なめこなど、普段見かけないなめこと出会うこともあるだろう。赤だし味噌も買ったことだし、ちょっとかしこまって友人や家族になめこ汁を振る舞ってみようと思う。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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