冬になると木々の葉っぱはすっかり落ちて、幹や枝があらわになります。
この寒々しい裸木のことを「冬木(ふゆき)」といいますが、それらが立ち並ぶ様子を「冬木立(ふゆこだち)」といい、俳句の季語にもなっています。
ただ、冬木立を見るたびにどうしても「殺風景」という印象を抱きます。
やっぱり木々は、春や夏、葉っぱが生い茂っているときが全盛期で、見応えがある。
秋の、紅葉した葉っぱが落ちていく様子もまた、風情がある。
ただ...冬はなんだか、モノトーンでさみしい雰囲気。
ずっとそう思ってきたのですが、最近少しずつイメージが変わってきました。きっかけは、個人的に最近はじめた「盆栽」です。落葉樹でちょうど冬木の状態なのですが、さみしい感じはまったくないのです。たとえ葉っぱが落ちても、木の枝はしっかりと太く地面に根をはっている。静かでありながら、生き生きとした気配を感じる。なにより、フォルムが露わになって木々の魅力が際立つ。そんな気がするのです。
たとえば、もみじ。
太い幹にすがるように伸びる細い枝。
うねうねと曲がった独創的なフォルムでたのしませてくれます。
もみじは3月頃に新芽が出て、4〜5月頃に開花する植物です。一本一本の枝は細いのに、しっかりと中に硬い芯でも入っていそうなたくましさを感じる。枝の先はすこしだけ赤みを帯びていて、なんだかいまにも芽吹きそうな春の兆しを感じます。
つぎに、ケヤキ。
太い幹から、細い枝や太い枝が血管のようにはりめぐらされながら上へ上へと向かって伸びています。
ケヤキはやや遅めの4月頃に新芽が出て、4〜5月頃に開花する植物です。
このフォルムはまるで、両手を広げてお日さまの力を蓄えているかのよう。すこし引いて見たときの佇まいもしっとりとした趣があります。コツコツと静かに、でも着実に。
芽吹くその日へ向けて準備している気配を感じるようです。
私はこの盆栽たちに、毎日欠かさず水やりをしているのですが、愛着もあいまって親しみを感じるようになりました。散歩していても、もみじやケヤキの冬木を見ると思わず立ち止まって観察してしまうほど。こういう自分の変化は嬉しいものです。
最後に、与謝蕪村が詠んだ俳句を紹介させてください。
現代語訳:冬木立を斧で切り付けてみたところ、なかから木の新鮮な香りが漂ってきた。見た目こそ枯れて見えるけれど、その内側から満ちる生命力に驚いた。
私はこの歌に出会ったとき、冬木立の見えない部分をあらわした見事な歌だなぁと唸りました。木の香りの瑞々しさがこちらにも届いてくるようで、盆栽の体験も合わさってあたたかな気持ちになりました。
じっと寒さに耐えながら、ゆっくりゆっくりと養分を蓄えていく。
誰にも見られなくていい、気づかれなくてもいいから、
時期がきたらすぐに動くことができるように、
足場をしっかり固めておく。
もしかしたら冬木立は、寒さで塞ぎ込みがちになる人の心にやさしく寄り添う存在なのかもしれませんね。
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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