こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は日本人にとって伝統的な食材のひとつ「海苔」についてのお話です。
「うちの子は白米と海苔があれば大丈夫です!」
お弁当やケータリングの仕事をしていると、たまに親御さんからこんなリクエストをいただく。
海苔は日本人の多くが子どもの頃から慣れ親しんだ、安心する味である。

そんなお米に欠かせない海苔だが、海苔はあくまで脇役だと思われがちではないだろうか。
私はそれで、以前失敗をしたことがある。
握りたてのおむすびを食べてもらうイベントでの事。お弁当仕事だと、お客さんが食べている姿を直接、見ることは多くない。いつもと違うシチュエーションにドキドキしつつ客席を見ていると、お客さんが食べにくそうにしていることに気が付いた。
海苔が噛み切りにくそうで、ふんわりむすんだ白米が手からこぼれてしまう。せっかくのお米と海苔が分離してしまっているではないか。

この日使った海苔は、お弁当仕事でも使うことがある地元の瀬戸内海産のもの。お弁当だと、お米の水分がほどよく海苔を柔らかくし、食べる頃にはちょうど食べやすい食感となる。美味しいと思う海苔を選んでいたのだが、ホカホカのおむすびには少し硬いのだ。
なんとなく海苔に違いがあるのは分かっていたが、私は海苔についてもっと知るべきだ!と、調べてみることにした。
年中出回る海苔にも、野菜や果物のように収穫できる時期がある。大体11月末から4月ごろの冬が旬だという。
「初摘みの海苔」という言葉があるが、その年の最初に収穫される若い海苔のことだそう。香りが高くて食感が良く、歯で噛むとサクッとするのに、口の中でふわっと溶けるという。その後は順番に二番摘み、三番摘みと収穫されて、少しずつ硬くてしっかりした海苔になっていく。

また海苔は広く日本で作られ、それぞれに特徴があるという。
例えば有明海産のものが有名だが、ここは波が柔らかく穏やかな内海で、干満の差が大きい。潮が満ちている時は海の栄養分をしっかり受け止め、潮が引くと海の上に露出し、太陽の光を浴びてうまみを閉じこめる方法で養殖される。この特徴から、歯切れがよく柔らかくて香り高い海苔が出来上がるそうだ。
一方、瀬戸内海産の海苔は、日光の当たらない水深の深い場所で養殖を行う。早い潮流の中で育てることで、肉厚でしっかりとした食感があり、味に深みのある海苔が出来上がる。時間が経ってから食べるものと相性が良いそうだ。

ちなみに海苔には表と裏がある。海苔を作る過程でできるのだが、表面はツルツルで裏面はザラザラしている。海苔を使う時は、ザラザラの裏面を米側にして巻くことが一般的だ。
しかしザラザラした裏面は、水分を吸収しやすいという特徴もある。あえて裏面を外側にすることで、海苔のパリッとした食感を残し、噛み切りやすく、上顎や唇に付きにくくなるという。
思えば、私の地元山口県には「山賊むすび」という大きなおむすびがあり、瀬戸内海産の海苔が使われているが、裏面を外側にして工夫して巻かれている。
今回のような炊き立てのおむすびには、柔らかい特徴を持つ海苔にしたり、巻き方を変えたりすれば良かったのだ。

さらに、海苔にはうまみ成分が含まれており、水分が加わることで、新たなうまみ成分を生み出し更に美味しさを引き立たせるという。まさしく、海苔とお米の相性は抜群。
工夫ひとつでお米を一層美味しくしてくれる、海苔は「名脇役」なのだ。
この凄さを知ってしまった私は、もう奥深い海苔の世界から抜け出せないのである。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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