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きみしぐれ

旬のもの 2024.03.22

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こんにちは。和菓子コーディネーターのせせなおこです。出会いと別れの季節、春がやってきました。

桜餅に三色団子、普段はなかなか和菓子に触れる機会が少ない人でも、春は和菓子が自然と目にはいってくる季節ではないでしょうか。

今日の主役は春の訪れを感じさせる「きみしぐれ」というお菓子。もともとは卵の「黄身」を使うこと、出来上がったお菓子の生地の割れ目が雨の「時雨」に似ていることから名付けられました。

お店ではひらがなで表記されていることも多く、初めはきみは君のことだと思い、なんと愛らしい名前なんだろう、と思っていました。元々の意味は違っても、渡す相手のことを思ってこのお菓子に想いを馳せるのも悪くはないな、と思ったり。自分なりに解釈して楽しむことができるのも和菓子の魅力です。

はじめてその魅力を感じたのは東京の下町にある小さなお店で出会ったきみしぐれでした。おじいさんとおばあさんの二人で営むそのお店はどのお菓子も表情がやさしく、人柄がそのままお菓子になったようでした。このお店の名物が「きみしぐれ」。きみしぐれの名前に相応しいたまご色をしています。

「きみしぐれをください!」
「はいはい、ちょっと待ってね〜」
透明のパックに詰めたあと、くるっと包装紙を巻いて「はいどうぞ」とおばあさん。
「若いっていいわね、今を楽しみなさいね〜」
和菓子と一緒に素敵な贈り物をもらい温かい気持ちになりました。

すぐに近くの公園できみしぐれをいただきました。手に持っただけでしっとり感が感じられるきみしぐれは、口に入れるとふわりと軽やかで口溶けがよく、気持ちまで軽やかになりました。

「時雨」という言葉は元々は秋から冬にかけて降る通り雨を指す言葉。そのため、このきみしぐれも冬に食べられることが多いのですが、新生活などの緊張を溶かしてくれる軽やかさは春にぴったりだなと感じました。

春に降る時雨は「春時雨」、桜の時期に降る時雨は「桜時雨」と呼ばれるのだとか。春は雨が多く降るため、他にも美しい雨の名前が付けられています。春の雨にはこんなに綺麗な名前があることを知り、少し憂鬱な気分になってしまう雨の日も、今年は楽しく過ごせそうです。

※焚き火を表したきみしぐれ
他にも白と緑で春の訪れをあらわしたものなど、きみしぐれは一年を通して四季の表現に使われています。

写真提供:せせなおこ

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せせなおこ

和菓子コーディネーター
福岡県出身。あんこが大好きな和菓子女子。和菓子を好きになったきっかけはおばあちゃんとつくったおはぎ。ぽかぽか暖かい春が好きです。おいしい和菓子を求めて全国を旅しています。

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