こんにちは。気象予報士の今井明子です。
夏らしい日が増えてきました。その一方で、梅雨の、特に末期は大雨が降り、各地で水害が多発しがちです。梅雨の末期といえば、雷も多いです。雷は、夏の夕方に天気が急変する「夕立」のイメージが強いのですが、梅雨の末期にもよく発生し、「雷が鳴ると梅雨が明ける」ということわざもあるほどです。梅雨に鳴る雷は「梅雨雷」と呼ばれます。
夏の夕立に伴う雷も、梅雨雷も、積乱雲という背の高い雲から発生します。しかし、その雲のでき方は違います。夏の夕立を引き起こす積乱雲は、カンカン照りの太陽が地面を照らし、熱せられた地表付近の空気が上昇することで発生することが多いです。しかし、梅雨雷をもたらす積乱雲は、高温多湿な太平洋高気圧と、その北にある涼しいオホーツク海高気圧などとの間にある梅雨前線に伴ってできる積乱雲です。
特に梅雨末期は、梅雨前線の南にある太平洋高気圧が勢力を増し、梅雨前線に向かって高温多湿な空気が流れ込みやすくなります。それで、梅雨前線に伴う雨雲が発達して、積乱雲が発生するのです。
この時期の雷を伴う大雨は、夕立のように1時間程度ですぐにやむのではなく、数時間続くことが多いです。もともと、ひとつの積乱雲の寿命は1時間程度なので、夕立は1時間程度ですぐにやむのですが、梅雨末期は同じ場所で積乱雲ができ続け、世代交代していくため、大雨が長時間降りやすいのです。そしてこのせいで、河川の氾濫や土砂災害が発生しやすくなります。
梅雨末期に雷が鳴るのを聞くと「もうすぐ梅雨明けかな?」と本格的な夏への期待が高まります。それと同時に、梅雨雷は水害の危険が迫っていることを知らせる存在でもあります。気象情報はしっかりとチェックし、早めに命を守る行動をとってほしいと思います。
今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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